川崎市麻生区の「KAWASAKIしんゆり映画祭」で慰安婦問題を扱ったドキュメンタリー映画「主戦場」の上映が中止になった問題で、同映画祭のゲストとして登壇したジャーナリストの金平茂紀さんが27日、「表現の自由と知る権利を放棄するものだ」と上映中止に抗議の意思を示した。主催のNPO法人と共催である川崎市の双方を批判した上で「権利侵害を問いただす動きが市民の側から出てほしい」と観客に呼び掛けた。

 金平さんは、慰安婦をモデルにした「平和の少女像」の展示が相次ぐ脅迫で中止に追い込まれ、国の補助金が不交付となった「あいちトリエンナーレ」に触れ、「同じ構図だが、抗議など何もない段階で上映が取り下げられており、事態はより深刻だ。表現の不自由の最新バージョンとして起きている問題だ」と強い危機感を示した。

 主戦場を巡っては、歴史修正主義者である出演者が上映禁止を求める訴訟を起こしたことを受け、市から懸念を伝えられた主催者が中止を決定したが、「行政が『懸念を伝える』こと自体が問題。目に見えない形で事前検閲が行われたに等しい」と批判した。

 映画祭はこの日が初日。金平さんは「抗議のためにゲスト出演をボイコットすることもよぎったが、残念な思いを共有したかった」と登壇したといい、「市と主催者には説明責任がある。あいちトリエンナーレでは作家が展示作品を引き揚げ、問題を考える機会をつくった。頰かむりするなら市民が求めてほしい」と呼び掛けた。多摩区から足を運んだ観客(60)は「権利が奪われることに私たちは鈍感すぎる。声を上げておかしいと伝え広めていかなければ」と話していた。

神奈川新聞
2019年10月28日 10:01
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