安倍政権が社会保障改革の司令塔となる新たな会議の新設を検討している、と報じられた。3日の朝日新聞によると、新会議の議長は安倍首相が務め、関係閣僚や有識者がメンバーに名を連ねる予定。事務局は内閣官房か内閣府に置く方向で検討が進んでいるという。

 社会保障制度をめぐっては、すでに厚労省や財務省などで現状の問題点や改善策を検討する部会が設けられ、政府に政策提言もしている。にもかかわらず、新たな会議がつくられる理由は決まっている。これまでのようにコツコツと議論を積み重ねるのではなく、「官邸主導」の名のもとに一気に弱者イジメの政策を押し通したいからだ。

 真っ先に切り込むのは高齢者だろう。財務省の財政制度分科会の資料によると、今後の社会保障費の伸びで大部分を占めるのが「高齢化による増加分」だからだ。とりわけ、2025年以降は人口の多い「団塊の世代」が全員、75歳以上の後期高齢者になるため、「議論を待っている場合じゃない」というのが政権のホンネなのだろう。

 新たな会議では、すでに浮上している「75歳以上の医療費自己負担の原則2割化」のほか、「マイナンバー活用による金融資産の保有状況を勘案した負担制度の導入」「介護保険料のさらなる引き上げ」「要介護1、2の生活援助サービスの保険給付外し」――などの改悪案がバンバン具現化される可能性がある。

■会議担当は進次郎氏か

 安倍首相が議長を務める新会議で骨組みを決め、国会に議案を提出。ロクに委員会審議をしないままダラダラと時間だけ費やした後で強行採決し、本会議で強行成立させる、というお決まりの民主主義破壊のパターンになるのだ。安倍首相は内閣改造で、会議担当の閣僚ポストを置くつもりらしいが、名前がささやかれているのが、自民党の厚労部会長である小泉進次郎氏だ。

「安倍政権は何が何でも社会保障制度に手を突っ込みたい。何せ、今度は総仕上げと位置付けていますからね。新たにつくる司令塔はその姿勢の表れでしょう。当然、国民負担を伴うために反発が予想される。そこで人気者の小泉さんを起用しようというわけです。小泉さんは党の『人生100年時代戦略本部』の事務局長を務め、安倍首相に社会保障改革の提言を提出しているほか、年金不足2000万円問題では『社会保障改革を議論する絶好のチャンス』などと言っていたから、適任というわけです」(与党担当記者)

 官邸主導で「令和の姥捨て策」を推進なんて冗談ではない。

日刊ゲンダイ
19/09/04 15:00
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