<社説>台湾にF16売却 むやみに緊張を高めるな

トランプ米政権が台湾へF16戦闘機を売却する方針を固めた。

最新型の66機で80億ドル(約8500億円)相当に上り、米台間の武器売買では最大規模となる。戦闘機は27年ぶりだ。
台湾を自国の一部とみなす中国が、「内政干渉だ」と反発している。「必ず強烈な対応を打ち出す」として、対抗措置を講じる姿勢も示している。

米中関係は、貿易摩擦で妥協点が見いだせず対立が深刻化している最中だ。米政権が今後、中国との貿易交渉で取引材料の一つにしてくるとの見方もある。

中国は、台湾問題は自国の「核心的利益」に触れるとして、譲歩の余地はないとの立場を貫いている。米国が経済面に加え台湾問題で圧力を強化すれば、状況は一層複雑化するだけではないか。

それでもこのタイミングで戦闘機売却の方針を固めた背景には、ボルトン大統領補佐官ら米政権の中枢にいる対中強硬派の存在がある。現実的な着地点を描いているようには見えない。

米中は経済規模で世界1位と2位の大国だ。両国の動向は世界の経済と安全保障に大きな影響を及ぼす。むやみに緊張を高めるような対応は慎まねばならない。

米国は1979年、「一つの中国」を主張する中国との間で国交を樹立する一方、台湾の防衛支援を盛り込んだ台湾関係法を制定した。
近年は台湾の軍事装備に老朽化が目立ち、F16の売却に踏み切るかが焦点となっていた。

台湾の蔡英文総統は「国防力を増強してこそ台湾海峡と地域の平和と安定を確保できる」とし、歓迎するコメントを出した。

台湾独立志向の与党民進党の蔡氏にとって今回の米政権方針は、軍事バランスの問題に限らず、再選を目指す来年1月の台湾総統選にも大きな意味を持つ。

台湾では最近、香港の「逃亡犯条例」改正案を巡る混乱を受け、「反中」世論が高まっている。蔡氏の支持率はこれに後押しされる形で回復した。中国との距離感が争点となる総統選で、米国との関係強化は追い風になるだろう。

トランプ氏の判断の根底にあるのも、来年の大統領選の再選である。中国の経済力や軍事力を脅威とみなす考え方は米国内に強い。それに応える意図がある。

中国の強権的な政治手法や不透明な経済慣行には、粘り強く改善を働き掛けていく必要がある。

差し迫った政権維持への思惑にとどまれば、長期的な視点から中国に相対することはできない。

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190820/KT190819ETI090008000.php

参考
信濃毎日新聞「米国が台湾にF16売却、むやみに緊張を高めるな!」
http://hayabusa9.2ch.net/test/read.cgi/news/1566268642/l50