明治学院大学国際学部教授 阿部 浩己 氏
「日本が朝鮮を植民地とした「韓国併合」条約は1910年に結ばれました。その5年前の第二次日韓協約で、日本は韓国の外交権を
剥奪して保護国としました。その際、韓国は「国の代表者に対する強制によって強引に条約が結ばれた」と主張していました。強
引な条約締結は、当時の国際法に照らしても違法です。日韓で基本条約と請求権協定を結んだ65年、日本は植民地支配について
「当時は合法」と主張しました。韓国は「当初から無効」と訴えましたが、うやむやにされました。
その後も植民地支配が合法か不法かという問題は平行線のまま、90年代に日本軍「慰安婦」や徴用工の問題が出てきました。
2012年と2018年、韓国の大法院(最高裁判所)判決は「慰安婦」や徴用工問題の根本に植民地支配の不法性があることを認定
しました。
二つの判決は、日韓請求権協定の交渉過程で日本政府は植民地支配の不法性を認めなかったので、同協定で放棄した請求権に
は、植民地支配の不法性に基づく被害への慰謝料請求権は含まれていないと踏み込んだ判決をしました。
この判決に日本政府は、引き続き植民地支配の不法性に触れず、日韓請求権協定で「解決済み」との立場に固執しています
日韓請求権協定第二条は、両国とその国民の間の請求権問題は「完全かつ最終的に解決」したと定めています。仮に将来、
問題が生じても一切合切終わりという主張は、典型的な強者の論理です。いまの国際秩序の中では通用しません。
条約の解釈の仕方について国際司法裁判所は71年、人権問題に関わるナミビア事件で「国際文書は、解釈の時点において
支配的な法体系全体の枠内で解釈適用されなければならない」と勧告的意見を出しました。
日韓請求権協定に置き換えれば、現時点において支配的な法体系、つまりこぼれ落ちてきた被害者の声を聞き取ると言う
国際法の在り方に照らして解釈しなくてはいけないということです。現在の国際法は個人の救済を求めているのです。
日韓両国の政府と最高裁は、日韓請求権協定で被害者個人の請求権は残っていると認めています。解決の道筋は法的に残
っています。被害者が生きている間に両政府はこの一致点を生かし、話し合いで解決すべきです。」


国際秩序に基づき、民主主義を標榜したいのであれば、個人賠償は認められなければならないと言うのが専門家の意見ですね