【令和初審判 参院選2019 】 2人区で唯一、立憲民主党と国民民主党のガチンコ対決が繰り広げられている静岡選挙区。立民が擁立したのが徳川宗家19代目、徳川家広氏だったことから公示前から注目を集めている。対する国民は現職の榛葉賀津也氏。徳川氏の知名度の高さに押され気味だが、ここにきて首相官邸が選挙後の協力関係をにらみ支援に乗り出した。立民VS国民の戦に官邸が“参戦”。さながら戦国時代のような熾烈(しれつ)な争いに発展している。

 徳川家康が晩年を過ごした駿府城から500メートルほど離れた静岡市内の商店街。立民の新人徳川氏は13日、演説会で「私は寝返りません」と聴衆へ叫んだ。応援に駆けつけた枝野幸男代表も「徳川氏こそ自民と戦える候補だ」と続いた。「国民の榛葉氏を意識したものだ」。発言の意図について選対幹部はこう説明した。

 立民は榛葉氏と原発を巡る政策や憲法改正で対立。民進党時代から蓮舫副代表や福山哲郎幹事長との確執が取りざたされていた側面もあり、同氏の地盤に刺客として家康の末裔(まつえい)を送り込んだ。 

 報道各社の情勢調査では自民現職の牧野京夫氏が優勢。残る1議席を巡り旧民進同士が骨肉の争いを繰り広げる。さらに混迷を深める要因が首相官邸の参戦だ。

 榛葉氏は菅義偉官房長官と親しく、政界関係者は「官邸が支援を企業や創価学会に働きかけた」と話す。公示後、13年参院選で自民陣営を支援していた地元の名士、スズキの鈴木修会長が榛葉氏の集会に駆けつけて周囲を驚かせる場面もあった。

 官邸の意向には“ギブアンドテーク”の思惑が透ける。見据えるのは選挙後。自公に日本維新の会などを加えた憲法改正に前向きな「改憲勢力」が国会発議に必要な3分の2を割り込む可能性があり、榛葉氏を新たな改憲勢力として囲っておくために“恩”を売る算段だ。徳川陣営は一連の動きを「榛葉氏は官邸に取り込まれてしまった」とみて終盤に向けた攻勢を強めていく構えだ。

 一方、榛葉氏はこの日、浜松市内での街頭演説で「私は大きなライバルに挑戦している。1人は巨大与党の現職3期目。もう1人は我々には恐れ多い立派な家系の人だ」と強調。自らを「雑草」と称し「どんな批判をされようとバッシングされようと雑草は枯れない」と訴えた。官邸の意向が働いているとの話について陣営は「そんなことはない」と受け流し「自民党の受け皿をつくっていく」と淡々と語った。

 徳川の殿様と、大名の加勢を受けた平民が戦うような構図。乱世の火は選挙戦終盤まで燃えさかりそうだ。

スポニチアネックス
2019年07月14日 05:30
https://www.sponichi.co.jp/society/news/2019/07/14/kiji/20190713s00042000534000c.html