通常国会が6月26日に閉会し、いよいよ7月4日公示・21日投開票の参院選が事実上始まった。与野党候補予定者ともども各選挙区で事務所開きが行われ、熱を帯びてきている。

 そんなさなかのことだ。公示目前の6月28日、「自民党重点地区情勢調査」なる調査データが永田町を駆けめぐったのだ。大手紙の政治部記者が言う。

「与野党が接戦になっている参院選16選挙区のデータですね。わたしも見ました。用紙1枚に書かれた“原本”があって、それをテキストデータに打ち込み直したものがメールで流れたようです。自民党から流出したものとみて、ほぼ間違いないようです」

 本サイトも自民党筋からこのデータを入手した。見てみると、6月22日に行った情勢調査と書かれてあり、北海道から大分まで16選挙区の候補者名と、小数第1位までのデータが書き込まれている。なるほど、参院選の調査データに間違いなさそうだ。

 いずれも野党統一候補が自民党候補と互角の戦いを繰り広げている「1人区」(定員1)か、与野党が複数候補を立てている都市部の選挙区となっている。

 つぶさに見てみよう。たとえば、イージス・アショア配備問題で揺れ、最もホットな選挙区のひとつである、秋田。

 現職の中泉松司参院議員(自民)に野党統一候補の寺田静氏が挑む構図だ。現在秋田では、静氏の夫・寺田学衆院議員が中心になってイージス・アショア配備反対を唱え、配備を受け入れた自民党系の佐竹敬久知事を厳しく批判。勢いに押された佐竹知事は慎重姿勢を強いられており、守勢に立たされた。これが如実に影響したのだろう、調査データは以下の通り、接戦となっている。

〈秋田〉中泉松司(自民)41.9 vs 寺田静(自民)40.0

 これと同様に接戦の構図になっている主な「1人区」を見てみると、自民と野党統一候補の戦いは以下のようになっていた。

〈岩手〉平野達男(自民)37.3 vs 横澤高徳(野党)38.6
〈宮城〉愛知治郎(自民)42.6 vs 石垣のり子(野党)41.2
〈山形〉大沼瑞穂(自民)41.6 vs 芳賀道也(野党)43.5
〈福島〉森雅子(自民)41.7 vs 水野さち子(野党)39.9
〈新潟〉塚田一郎(自民)35.6 vs 打越さく良(野党)42.7
〈三重〉吉川有美(自民)41.0 vs 芳野正英(野党)36.7
〈滋賀〉二之湯武史(自民)42.0 vs 嘉田由紀子(野党)42.8
〈愛媛〉らくさぶろう(自民)37.9 vs 永江孝子(野党)45.6
〈大分〉礒崎陽輔(自民)41.5 vs 安達澄(野党)37.6

トータルすると、接戦の1人区は、自民党5勝5敗の5分となるが、いずれも僅差で、途中でひっくり返ってもなんの不思議はない。はたして、この段階で、自民党がこのようなデータを流出させる狙いはどこにあるのか。自民党の選挙に詳しい古参の議員秘書が語る。

「接戦区のデータを中心に自民党陣営の尻を叩く効果を狙っている。しかも、今回のデータは広く拡散するように仕掛けており、リードしている野党陣営に油断を与える材料にもなるだろう。今回のデータ、選挙戦に突入した途端のできごとだけに、野党側の陣営が緩みかねない。あまりありがたくないはずだ」

2につづく

LITERA
2019.07.01 11:41
https://lite-ra.com/2019/07/post-4809.html