来月21日投開票の参院選で注目度ナンバーワンは「れいわ新選組」を立ち上げた山本太郎参院議員だろう。常識にとらわれない発言と行動に眉をひそめる大人も多いが、明快な主張を支持する若者は少なくない。街頭では年金問題も語っている。果たして、そこに老後の不安を解消させる要素があるのだろうか。


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「あなたの税金で食べている公僕、国会議員が一体どのような将来像を持ってこの国の運営に関わっていくつもりなのか、ぜひ、ご確認ください」

 山本議員が街頭でマイクを握って話し始めると、大勢の通行人が足を止めて耳を傾ける。タレント出身の経歴はダテじゃない。自分の見せ方をよく知っている。聞き手の気持ちをグッと掴むのがうまいのだ。

「れいわ新選組」は「8つの緊急政策」を打ち出している。その第1に掲げているのが「消費税は廃止」だ。街頭でも、「そんなん無理なんじゃないの? と思われた方がいるかもしれません。でも、マレーシアでは消費税、廃止にしましたよ。実際にやられたのはマハティールさん。93歳で首相にまた返り咲いた方ですけど、そのマハティールさんを動かしたのは民意です。人々がどう考えるか、どう動くかで、その結果が変わる。どうしてみなさんは消費税廃止にできないと思うんですか」と、一人一人にじっくりと語りかけるように訴える。

「滑舌が良くて聞き取りやすい上、自分の言葉で話ができるし迫力もあります。掲げる政策も、目の付けどころがいい。世の中の流れが分かっている。しかも、数字やデータを示しながら話すので、説得力を持たせることもできています。そのため、若い人だけでなく、その上の年齢層の人たちも、思わず聞き入ってしまうのでしょう」(政治評論家・有馬晴海氏)


■賃金上げて消費を喚起

 彼が訴える消費税廃止は、年金だけでは2000万円が足りなくなるという老後の問題にも関わってくるものだ。消費税を廃止することで老後を安定したものに変えられるという。

 先週、東京・新宿の街頭でも、こう話していた。

「いま年金の話、ぐだぐだぐだぐだ言ったって仕方がないですよ。年金は破綻しません。なぜなら支給額が減っていくだけ。心配しないでください。だとするならば、年金じゃない形でみんなを安定させなきゃならない。まずやらなければならないことは、消費税をゼロにして今の生活を楽にしていくこと。加えて、ここからみなさんがしっかりと蓄財していけるような、丸腰でも生きていけるような世の中にしたいんですよ」

 消費税を廃止すれば初年度の物価は5%以上落ちる。これは減税と同じぐらいの効果。それによって消費を喚起する。デフレの時に消費税を上げれば、だれもモノを買わない。誰かの消費は誰かの所得。消費が失われたら所得も失われる。いまやるべきは賃金上げろ。そのために消費を喚起させなきゃいけない――そう熱く語る姿を見ていれば、聴衆が「そうだ!」と拍手したくなる気持ちも理解できる。

 実際に消費税廃止なら財源は20兆円ぐらい不足するが、所得税の最高税率を昔に戻すことに加え、法人税に累進性を導入すればいいと主張。儲かっている時は税率が高くなり、ダメな時は低くなるという制度で、2016年度の法人税収に当てはめると、これだけで税収は19兆円増えるという。

 かつては天皇に直接手紙を渡そうとしたり、安保関連法案の強行採決に反対して喪服で本会議に出席したりした。そのタブーなき姿勢は恐怖すら感じさせることもあるが、突破力や破壊力は強烈で、本当に何かをやりそうな期待感も持たせるのだ。懸けてみる価値はあるかもしれない。

日刊ゲンダイ
19/06/29 06:00
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