辺野古移設が争点となった二〇一八年の名護市長選。選挙に関わった関係者は「国政選挙以上に建設業界がフル稼働した」。政府・与党は、移設推進派の元名護市議、渡具知武豊氏を総力を挙げて支援。移設阻止を掲げる現職の稲嶺進氏を破り、八年ぶりに反対派から市長の座を奪還した。

 「国家権力が襲いかかってきた」と稲嶺氏。政府は振興策をちらつかせて地元業者の締め付けを図った。県政関係者は「末端の土建業者にまで官邸から『頼むぞ』と電話がかかってきた」と明かす。

 建設業界の献身ぶりは、自民党名護市支部の政治資金収支報告書からうかがえる。支部は渡具知氏の出馬表明直後から、建設業者を中心に約二千万円を集金。辺野古工事の受注業者の献金額は突出していた。自民党県連などからの寄付を合わせた約二千百万円が市長選直前の一七年十二月〜一八年一月、渡具知氏側の政治団体や本人に流れた。

 企業献金は政党支部や政治資金団体にはできるが、それ以外の政治団体や政治家個人には禁じられている。建設業者などからの献金が、名護市支部を迂回(うかい)して渡具知陣営の選挙資金になったようにも見える。

 支部に献金した市内の建設会社社長は「県北部では公共工事が減っている。地元じゃ死活問題。辺野古の仕事につなげたくて献金した」と打ち明けた。渡具知市長の後援会は本紙の取材に「支部からの寄付は政党活動の一環と認識している。迂回との懸念は当たらない」とコメントした。

東京新聞
2019年6月25日 朝刊
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