国会会期末になって急浮上した「老後2000万円」問題に大揺れとなっている政府、自民党。参院選への影響を少しでも抑えようと火消しに躍起だが、今や風向きは完全に変わり、永田町では「歴史は繰り返すじゃないが、あの時と状況がソックリになってきた」との声が漏れ始めた。

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「あの時」とは第1次安倍政権が退陣した2007年のことだ。今年と同じ4年に1度の統一地方選と、3年に1度の参院選が重なる「亥年」で、当時の安倍首相は7月の参院選を控え、国会で「消えた年金問題」の厳しい追及にさらされていた。

 まさに「消された報告書問題」でつるし上げを食らっている今と同じだが、重なる状況はこれだけじゃない。

「被災自治体と緊密に連携し、余震や土砂災害など二次災害への警戒を継続するとともに、国民への的確な情報提供、災害応急対策に万全を期してほしい」

 18日夜に山形県沖を震源とするM6・8(暫定値)の「新潟・山形地震」を受け、首相官邸で関係閣僚会議を開いた安倍。菅官房長官も「官邸が司令塔となり、関係省庁が一体となって対応に万全を期していきたい」と強調していたが、07年も大地震があった。同年7月16日に発生した「新潟県中越沖地震」(M6・8)だ。

 当時の安倍は異例の対応を取った。閣僚懇談会で「復旧事業費を把握するため国の職員が調査に全面協力するなど、スピード感を持って対応してほしい」と矢継ぎ早に指示を出し、予定していた参院選の選挙演説を中止して新潟に直行。避難所などを訪れたのだが、逆に「わざとらしい」「災害を選挙利用している」と被災者の怒りを買い、支持率はさらに低下。結局、参院選で自民党は歴史的惨敗を喫し、安倍は9月に「総裁ブン投げ辞任」することになったのだ。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏がこう言う。

「確かに今と07年の状況は恐ろしいほど似ています。07年は支持率が右肩下がりで、負のスパイラルに陥りましたが、今回はどうか。前回と異なるのは、同じ年金問題でも今回は、高齢者の生活に直結する問題であり、投票所に足を運ぶ層にとって深刻ということです。これは投票行動を大きく左右すると思います」

 年金不足の事実は隠したいから、報告書は受け取らないし、なかったことにする。そんな破廉恥政権に震災対応を任せられるはずがない。どんなに被害が起きていても、平然と「問題ナシ」と言い出しかねないからだ。驕れるものは久しからず。2度目の政権ブン投げが現実になる日は遠くない。

日刊ゲンダイ
19/06/20 15:00
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