安倍晋三首相が官邸で官庁幹部と面談した際に、官邸が議事概要などの打ち合わせ記録を一切作成していない問題で、菅義偉官房長官は3日の記者会見で「記録は、政策を所管する各行政機関が公文書管理法等に基づき必要に応じて作成・保存する」と述べ、官邸の未作成を公式に認めた。

 政府は2017年12月に公文書ガイドラインを改定し、政策や事業方針に影響を及ぼす打ち合わせは記録を作成するよう官庁に義務付けた。ガイドラインでは、打ち合わせに出席した双方が記録を作ることも可能とされる。官邸は官庁に作成を丸投げしている形だ。

 しかし、官庁側が記録を十分に作成しているとは言い難い。毎日新聞が首相の下で災害対策や重要政策などを担当する内閣官房に情報公開請求したところ、47件の首相面談で打ち合わせ記録は一件も作成していないと回答した。

 ガイドラインの公式解説集は「事案の決定権者への説明は記録を作成する」と例示しているが、菅氏は3日の会見で「(ガイドラインに)反しているとは思わない。適切に対応している」と述べた。

 公文書管理に詳しい小谷允志(まさし)・記録管理学会元会長は「記録が作成されていなかったり、一方にしか残されていなかったりすると、官邸と官庁の説明に食い違いが生じた時に国民はどちらの説明が正しいのか検証できなくなる」と指摘。「加計学園を巡る問題では『総理のご意向』などと書かれた記録が関係官庁の一方にしか残されておらず、疑惑はうやむやにされた。また同じ問題が起こり得る」と懸念を示した。【大場弘行】

毎日新聞
2019年6月3日 22時01分
https://mainichi.jp/articles/20190603/k00/00m/010/272000c