日本の65歳以上人口が最も多くなるのは2042年、75歳以上人口のピークは2054年と見込まれている――。国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(出生・死亡中位推計)。

 就職氷河期に社会に出たロストジェネレーションが超高齢社会の主役となっていく時期にあたり、2040年以降を見すえた社会保障見直しの議論が始まっている。

 そんななか近未来の日本を描いた映画が昨年11月に公開された。オムニバス映画「十年 Ten Years Japan」(http://tenyearsjapan.com/別ウインドウで開きます)だ。5人の新鋭の若手監督が高齢化やAIなど様々な観点から10年後の日本を描き、是枝裕和監督が総合監修している。

 その第1編「PLAN75」で描かれるのは、75歳以上の高齢者に安楽死を勧める国の制度ができた日本の姿。タブーとも言えるテーマに切り込んだ早川千絵監督は1976年生まれ、高校卒業後に米国で学んだロスジェネ世代だ。

 ――映画の舞台は、高齢化がさらに進む10年後の日本。「厚生省人口管理局」の公務員・伊丹は、貧しい高齢者を相手に安楽死プランの勧誘をし、その妻は認知症の母親の見守りに苦悩しています。私(記者)が怖いと感じたのは安楽死制度「PLAN75」の利用を呼びかける国のテレビCMの場面です。「あなたの決断を、全力でサポートします」「痛みや苦しみは一切ありません」と穏やかに語りかける。利用者には10万円が支給される。一方で、役所内の研修では、ターゲットは「国が養わなければならない人たち」、低所得者らと言い切っている。優しい顔つきのキャッチフレーズに、低所得高齢者を減らすという目的が隠されているところに、不気味なリアリティーを感じました。

 「(映画の中で)国は、貧しい…

朝日新聞
2019年5月8日5時0分
https://www.asahi.com/articles/ASM4P4TH2M4PULZU00P.html