「拉致問題で7月10日に衆院解散」――。永田町で、こんな仰天シナリオが囁かれ始めた。安倍首相が電撃訪朝して、拉致問題解決の期待を高め、衆院解散に打って出るというのだ。

  ◇  ◇  ◇

「消費増税の延期で国民に信を問うパターンは3回目となるとインパクトが弱い。野党も増税反対だから選挙の争点にもなりません。そこで浮上しているのが、北朝鮮の金正恩労働党委員長とのサプライズ首脳会談で支持率を上げ、一気にダブル選になだれ込むシナリオ。7月7日に日朝会談、同10日解散、8月4日に衆参同日選挙という具体的な日程も囁かれています」(官邸関係者)

 北朝鮮問題で蚊帳の外に置かれている安倍政権がいきなり日朝会談とは、にわかには信じがたいが、官邸が画策している兆候が、この1週間で次々と明らかになってきた。

 まず、23日の閣議で報告された2019年版の「外交青書」から、「北朝鮮に対する圧力を最大限に高めていく」という表現が削除されたこと。対話路線に舵を切ったことをうかがわせる。

 また、菅官房長官は25日の会見で、5月9日から訪米することを正式に発表。「拉致問題担当相として、解決に向けた日米の緊密な連携を確認する」という。

 22日から欧米外遊中の安倍首相も、行く先々で拉致問題に触れて回っている。初訪問のスロバキアでは、北朝鮮と国交がある東欧4カ国(V4)の首脳らに協力を求めた。

 27日、ワシントンで行われた日米首脳会談でも北朝鮮問題に多くの時間が割かれ、会談後、安倍首相は日朝首脳会談実現について「トランプ大統領から『全面的に協力する』と力強い言葉があった」と語った。
広告

 これまで頬かむりを決め込んでいた安倍首相と菅官房長官が突然、拉致解決をアピールし始めたのだ。

「官邸は当初、6月の日ロ首脳会談で、北方領土の2島先行返還に合意して信を問う『北方領土解散』を目論んでいました。しかし、日ロが行き詰まり、拉致問題に切り替えた。平壌に飛んで首脳会談を行うのは小泉元首相の猿マネですが、外交成果を上げるには北朝鮮問題しか残っていないのです。安倍首相は北との関係をこじらせた張本人だし、外交オンチで拉致問題や国交正常化などの難題を解決することは不可能でしょうが、瞬間的に支持率が上がり、ダブル選挙で大勝すればいい。今は北も追い詰められて苦しい状況です。制裁解除に日本が動くなら首脳会談に乗ってくる可能性はある。もちろん米国の了承を得る必要がありますが、トランプ大統領と異例の3カ月連続会談を行う理由のひとつが、日朝首脳会談の地ならしでしょう」(政治評論家・本澤二郎氏)

 小泉訪朝当時、米国から「テロ支援国家指定」をされて追い込まれていた北朝鮮は、ブッシュ大統領との蜜月をウリにしていた小泉氏を利用しようとした面がある。金正日総書記が後ろ盾を頼って訪ロした際、プーチン大統領は会談の席で「コイズミは信頼できるから会うべきだ」と口添えしたとされる。その直後に平壌での日朝首脳会談が実現した。

 北朝鮮を取り巻く現状が似ているのは確かだ。今年2月にベトナムで開かれた首脳会談が不調に終わり、米朝関係は膠着状態にある。トランプべったりの安倍首相は外交成果で功を焦っている。そんな中、金正恩委員長が訪ロして25日にプーチン大統領と初会談。ロシア側は「朝鮮半島をめぐる交渉の仲介役になる」と伝えたという。「シンゾーは交渉進展をチラつかせればカネを出すから会うべきだ」などと口添えした可能性もある。

 選挙に勝つためなら何でもアリの政権だから、電撃訪朝でダブル選は十分あり得る話だ。

日刊ゲンダイ
19/04/27 15:00
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/252873/