旧優生保護法(一九四八〜九六年)下で障害者らに不妊手術が繰り返された問題で、被害者への「反省とおわび」と一時金三百二十万円の支給を盛り込んだ救済法が二十四日、参院本会議で全会一致により可決、成立した。同日中の施行を目指し調整しており、早ければ六月にも支給が始まる。障害者差別に当たるとして旧法の「優生手術」規定が削除されてから二十三年。ようやく国による救済が始まる。

 安倍晋三首相は談話を発表し「政府としても真摯(しんし)に反省し、心から深くおわび申し上げる」と初めて謝罪の意を表明。「全ての国民が疾病や障害の有無で分け隔てられることのない共生社会の実現に向けて、政府として最大限の努力を尽くす」とした。談話は閣議決定をせず、救済法と同様に国の法的責任には触れなかった。

 根本匠厚生労働相も「着実な一時金の支給に向けて全力で取り組む」との談話を発表した。

 一方、国会審議で被害者からの意見聴取は行われなかった。各地の国家賠償請求訴訟で原告は最大三千万円台後半を求めており、一時金の額との開きは大きい。五月二十八日に仙台地裁で初の判決が言い渡されるが、国は違憲性を認めておらず、救済法成立後も訴訟は継続する見通し。

 救済法は議員立法。与党ワーキングチームと野党を含む超党派議員連盟が昨年三月からそれぞれ議論を始め、一本化した。被害者が心身に多大な苦痛を受けてきたとして「われわれは、それぞれの立場において、真摯に反省し、心から深くおわびする」と前文に明記。一時金額は被害者に補償金を支払ったスウェーデンの事例を参考にした。

 支給するのは不妊手術を受け、救済法の施行日時点で生存している被害者本人で、故人や配偶者らは対象外。強制手術だけでなく、本人同意のケースも対象とする。

東京新聞
2019年4月24日 夕刊
https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201904/CK2019042402000262.html