大企業の会社員らが加入する健康保険組合を束ねる同組合連合会は二十二日、世帯主ら被保険者が一年間に負担する一人当たりの平均保険料が三年後には現状より五万円以上増え、約五十五万円になるとの見通しを発表した。団塊の世代が七十五歳以上の後期高齢者に入り、現役世代が拠出する支援金が増えるためで、このままでは支え切れない健保も続出すると予測。制度の見直しを訴えている。 (井上靖史、藤川大樹)

 現在、七十五歳以上が加入する後期高齢者の医療費は五割を税金、四割を七十四歳以下の人が入る保険が支援金を出している。

 健保連の河本滋史(かわもとしげふみ)常務理事は会見で、団塊の世代が後期高齢者入りする「二〇二二年」に健保の危機が訪れると繰り返した。

 健保連によると、加盟する千三百八十八の健保組合のうち、本年度、赤字が見込まれる組合は全体の六割を超す八百五十六に上る。財政の悪化から今年四月一日付で五つの組合が解散した。影響が大きいのは、高齢者医療への支援金で、一九年度は総額三兆四千四百億円に達した。支出全体の45%を占める。健保連では、これが二二年度には三兆九千三百億円にまで膨らむと推計している。

 負担は保険料にかぶさることになり、健保連の予測では被保険者一人当たりの年間保険料は二二年度に五十四万八千円になる。一九年度の四十九万五千円から大幅増となる。保険料は現在の高齢者医療制度が導入される前の〇七年度と比べ、この十二年間で年間十一万二千円も増えてきた。負担が見えにくく「隠れ増税」との批判もあるが、それを上回る増え幅となる見通し。

 健保組合は大企業の社員が中心だが、給料に保険料が占める割合は増え続けている。一九年度は平均9・2%になり、中小企業の社員らで構成する全国健康保険協会(協会けんぽ)の平均保険料率10%に近づいており、健保組合を自主運営する利点も薄れている。健保連の佐野雅宏副会長は「現役世代の負担は限界に近づいている」と主張し、制度の見直しを訴えている。

東京新聞
2019年4月23日 朝刊
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