近年でも、ベネズエラやギリシャ、ジンバブエ、トルコなど、財政危機や通貨危機に陥った国は少なくありません。そうしたなかで、日本だけが財政破綻を回避できると楽観視して、さらに借金を重ねていくのは、無責任のそしりを免れないでしょう」

「異次元緩和」を続ける日銀が保有する国債は今や、政府が発行している全国債残高の5割近い470兆円にのぼる。この数字自体まさに「異次元」だが、日銀は粛々と国債買い入れを続けている。しかし、歴史は「多額の国債を発行しても、経済の基礎がゆらぐような心配は全然無いのであります」という根拠の薄い惹句は信用しないほうがいいと教えている。

※『日本銀行「失敗の本質」』より一部抜粋、再構成

【プロフィール】原真人(はら・まこと)/1961年長野県生まれ。早稲田大学卒。日本経済新聞社を経て、1988年に朝日新聞社に入社。経済記者として財務省や経済産業省、日本銀行などの政策取材のほか、金融、エネルギーなどの民間取材も多数経験。経済社説を担当する論説委員を経て編集委員。著書に『朝日新聞記者が明かす経済ニュースの裏読み深読み』(朝日新聞出版)『日本「一発屋」論−バブル・成長信仰・アベノミクス』(朝日新書)、共著に『失われた〈20年〉』(岩波書店)などがある。