【ワシントン=河浪武史】ムニューシン米財務長官は13日、日米が15日から始める貿易協定交渉で「為替も議題となり、協定には通貨切り下げを自制する為替条項を含めることになる」と述べた。法的拘束力のある通商協定に為替条項が盛り込まれれば、日本側の円売り介入などが制限される可能性がある。日本は為替条項の導入に反対しており、日米協議の大きな争点となる。

ムニューシン長官は国際通貨基金(IMF)の関連会合後に一部記者団の質疑応答に臨み、対日貿易交渉で為替問題を議論すると明言した。モデルケースとして、新しい北米自由貿易協定(NAFTA)である「USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)」を挙げ、対日交渉でもUSMCAと同じく協定本文に為替条項を入れる考えを強調した。

法的拘束力の強い通商協定の本文に為替問題を巡る条項を入れこむのは極めて異例だ。ムニューシン氏は条項の内容として「為替政策の透明化と、競争的な通貨切り下げの自制」を挙げた。日米は円ドル相場を巡ってさや当てを繰り返してきたが、貿易協定に為替条項を盛り込めば、市場は米国がドル高是正で貿易赤字の解消を目指すと解釈する可能性もある。

日米は15日から貿易協定交渉を開始する。茂木敏充経済財政・再生相が訪米し、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表と2日間の日程で協議する。ムニューシン氏は「日米は貿易問題や2国間の経済関係など幅広い案件を議論する」との見通しを述べた。

日本は自動車や農産品などモノに限った物品貿易協定(TAG)を求めているが、米国はサービスも含めた包括的な自由貿易協定(FTA)を想定しており、まず交渉範囲を取り決める必要がある。ムニューシン氏は締結期限など交渉の先行きについて「現時点で固まっているわけではない」と述べるにとどめた。

日本経済新聞
2019年4月14日 6:09
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