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「付箋 ピリピリ」 定例会見に臨む菅官房長官の資料には「辞任ドミノ」や「政権内ひきしめ」などの言葉が書かれた付箋が付けられていた=11日午後、首相官邸で

 東日本大震災の復興を軽視した発言で桜田義孝前五輪相が事実上、更迭されたことを受け、安倍政権内から、第1次政権の退陣につながった閣僚の辞任ドミノの再来を警戒する声が出始めた。閣僚の不祥事が相次ぎ、春の統一地方選で後退、夏の参院選で惨敗した第1次政権と現政権は重なる部分が多いからだ。 (関口克己)

 「十二年前を少し思い出してしまう。選挙が近づくにつれ、いろいろなことが重なる」

 自民党の林芳正前文部科学相は十日夜のBSフジ番組で、桜田氏の辞任について、こう語った。

 「十二年前」とは、第一次安倍政権だった二〇〇六年から〇七年にかけて、自殺した松岡利勝農相を含めて五閣僚が政治とカネの問題などで相次いで辞任。〇七年に当時の安倍晋三首相の退陣につながったことだ。今年は統一地方選と参院選が十二年に一度重なる「亥年(いどし)選挙」で、前回は〇七年だった。

 首相が一二年末に政権復帰して以降、辞任した閣僚は桜田氏が八人目。昨年二月の江崎鉄磨沖縄北方担当相以降、閣僚辞任はなかった。しかし、統一地方選前半戦の投票二日前、「忖度(そんたく)」発言をした塚田一郎元国土交通副大臣が事実上更迭された。自民党は十一道府県知事選と六政令市長選のうち、大阪、福岡、島根の知事選と大阪市長選で推薦候補が敗れた。

 二十一日には統一地方選後半戦の市区町村長選などのほか、衆院大阪12区、沖縄3区の補選が投開票される。自民党は衆院補選で厳しい戦いを強いられており、首相は十一日「内閣全員がより一層、身を引き締めていかないといけない。さまざまな批判を真摯(しんし)に受け止めないといけない」と記者団に語った。

 ただ、不安要素も多い。政権中枢で首相を支える麻生太郎副総理兼財務相は、森友学園を巡る国有地売却に関する決裁文書改ざん問題などの責任を取っていないとして、野党が追及。麻生氏自身、過去に多くの失言をした。

 片山さつき地方創生担当相は政治とカネの問題を抱える。収入記載漏れなどで政治資金収支報告書を相次ぎ訂正したほか、会社経営者から百万円を受け取り国税庁に口利きをしたとされる疑惑が報じられた。

 立憲民主党など主要野党は十一日、国対委員長会談を開催した。衆参両院の予算委員会で、閣僚の資質に関する集中審議を求める方針を確認し、与党側に要請。自民党は拒否した。立民の辻元清美国対委員長は「まだ辞めさせないといけない閣僚はいる」と指摘し、特に麻生氏と片山氏の名前を挙げた。

東京新聞
2019年4月12日 朝刊
https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201904/CK2019041202000157.html