沖縄県で、9日告示の衆院沖縄3区補欠選挙(21日投開票)をめぐり、異変が起きている。自民党沖縄県連が党本部や首相官邸に「反旗」を翻しているのだ。きっかけは、昨年9月の県知事選にさかのぼる。

 「党本部(官邸)主導と言われた選挙方式で、辺野古移設問題を封印し、経済振興に特化した政策、訴えは、全国一景気が良いといわれる県内景気の前に効果がなく、情勢判断の誤り感が否めなかった」

党本部や官邸「情勢判断誤り」

 3月23日の県連大会に提出された知事選の総括文書は、党本部や官邸に対する批判のオンパレードだった。

 知事選は、同県宜野湾(ぎのわん)市の米軍普天間飛行場を名護市辺野古に移設する計画を左右するだけに、自民党は党を挙げて推薦候補の佐喜真淳(さきま・あつし)前宜野湾市長(54)を支援した。二階俊博幹事長(80)や菅義偉(すが・よしひで)官房長官(70)ら大物が相次いで沖縄入りし、党所属国会議員も先を争うように駆けつけた。

 これが裏目に出たというのが県連の見方だ。知事選の総括では「国会議員や秘書らを大量動員し、関係企業等への働きかけを徹底したが、そのたびに動員や対応で振り回されるとして、県連に苦情が多数寄せられた」と批判した。

 県連内部には「知事選に負けた後に、責任を党本部に押しつけるのはおかしい。県連こそが反省すべきだ」(県連会長経験者)という声もある。

 しかし、党本部への不満は選挙期間中からくすぶっていた。自民党を支持する企業幹部は「入れ代わり立ち代わり自民党議員が訪問して仕事にならない」と悲鳴を上げていた。

 ある現職閣僚は沖縄に入った後「それで私はどこを回ればいいのか?」と聞いて周囲をあきれさせた。陣営関係者は「よほどの客寄せパンダでない限り、自分がパイプを持つ業界の関係者をあらかじめリストアップしておくものだ」と憤る。

 応援に入った議員が街頭演説する場合、動員を求められたことも関係者を閉口させた。ある大物政治家が街頭演説を行うため、500人を集めた陣営関係者は「何回も何回も動員させられると支持者も逃げてしまう。500人の街頭をやるたびに500票失うような感覚だった。街頭は客を呼べる小泉進次郎党厚生労働部会長(37)だけでいい」と振り返る。

 総括文書は「党本部(官邸)の沖縄県民の機微な感情の理解不足が表れた戦い方となった」とも言及している。県内経済が好調な中で振興策を訴えても効果がないという文脈での指摘だが、「理解不足」はこれにとどまらなかった。

 「町中に英語があふれている。これはものすごい強みだ!」

 昨年9月19日に名護市で行われた集会では、文部科学省の宮川典子政務官(40)がこう強調した。同席した県内のある首長は「英語があふれているのは米軍基地があるからだ。保守層でももろ手を挙げて米軍基地を歓迎している人は多くないんだから、選挙には逆効果だ」と顔をしかめた。

2につづく

産経新聞
https://www.sankei.com/premium/amp/190409/prm1904090007-a.html