厚生労働省は4日、40歳以上の会社員らが納める介護保険料に関し、2019年度の徴収額が本来より最大約200億円不足する恐れがあると発表した。企業の健康保険組合などから保険料を集める厚労省の外郭団体「社会保険診療報酬支払基金」が計算を誤ったため。

 支払基金は1月にミスの可能性を厚労省に伝えたが、同省は放置。健保組合が本来の保険料に基づく予算がつくれない事態となった。

 会社員らの介護保険料は各健保組合などが徴収し、基金を通じて介護保険を運営する市区町村に納付する。多くの各健保組合は、基金が算出した係数に基づき、納付額を計算する。

 係数は、各健保組合の予算編成のために年末に推計値を出し、3月に確定させる。厚労省によると、1月に支払基金から厚労省に「推計値が誤っているかもしれない」と伝えられたが、厚労省は確定値で正しくするよう求めた。

 しかし、確定値が出た段階では各健保の予算編成は終わっていた。各健保組合はこれから支払基金に納付する。支払基金の試算では、各健保組合の予算が必要額より最大200億円不足している恐れがある。

 厚労省は4月1日付で各健保組合にミスがあったことを通知した上で、納付を要請した。この際、20年度に納付することも認めつつ、準備金の取り崩しなどでできるだけ19年度中に納付するよう求めている。

 だが、準備金は今後への備えが目的で、法定額が決まっている。取り崩せばこれを下回るケースも想定される。一方、既に始まっている19年度の保険料引き上げを加入者に求めるのも難しく、納付に応じられない健保組合も出てくるとみられる。

 厚労省は、保険料不足が解消しない場合でも介護保険財政に影響を与えないよう対応する方針だ。同省介護保険計画課の担当者は「単純ミスで、大変残念。確認作業などの指導を徹底したい」と述べている。【原田啓之、酒井雅浩】

毎日新聞
2019年4月4日 21時18分
https://mainichi.jp/articles/20190404/k00/00m/040/511000c