鷲尾英一郎衆院議員が3月20日、自民党の二階俊博幹事長に入党届を提出した。民主党政権で農水政務官を務め、一昨年、旧民進党に離党届を出した後、無所属で勝ち上がったが、同氏の新潟二区には比例復活の自民現職がいる。これには「またか」との不満が党内で噴出。皆の念頭にあるのは細野豪志元環境相のことだ。一月末に無所属ながら二階派に入会。二階氏は鷲尾氏に続き、細野氏の自民党入りも画策している。

 だが、二階氏主導とされがちな2つの動き、実は、裏で舞台回しをしているのが菅義偉官房長官(70)であることは、あまり知られていない。

 細野氏は二階氏に先立って菅氏に相談。菅氏の「党のことは二階さんに言った方がいい」との助言通りに動いた。鷲尾氏も同じで、菅氏は二階氏への相談を促した上で「3月中に自民党入りできるようにする」と確約、その通りになった。鷲尾氏は二階派や麻生派からの誘いを断り、しばらくは無派閥で、将来的には“菅派”で活動したいと周囲に明かしている。

 菅氏の影響力は党内外に広がりを見せている。自らに近い無所属の若手をしばしば食事に誘い、資金援助も惜しまない。さらに「40人超を抱える二階派だが、二階氏の後継者がいない。そこで、菅氏に禅譲か? との見方が出ている。“菅派”を足せば一気に70人規模の大派閥の領袖。ポスト安倍の可能性が出てくる」(政治部デスク)という。

勢力を拡大する菅氏への警戒

 勢力を拡大する菅氏に、安倍首相周辺は警戒感を強めている。今井尚哉首相秘書官はその筆頭だ。統計不正問題の中間報告がずさんな内容で批判され、再提出に追い込まれた際には「総理や私がダボス会議で日本不在の間に、菅さんが急がせたからだ」と批判。

 杉田和博官房副長官も同様だ。先日、首相や菅氏らとの打ち合わせの際、「総理は字が綺麗ですから、発表する元号の揮毫は自らされたらどうですか」と提案。首相は「プロに任せましょう」と断ったが、政治部記者は「小渕恵三官房長官は『平成』発表で知名度が高まり、その後首相に登り詰めた。杉田氏は菅氏がこれ以上力を持つのが嫌なのでしょう」と語る。

 そんな菅氏を支える中核は、無派閥の若手議員十数人で作る「ガネーシャの会」。ガネーシャはインドの現世利益をもたらす神だ。ポスト安倍候補の体たらくが続けば、現世利益にありつこうと菅氏に近づく勢力は、さらに増えそうだ。

週刊文春
2019/03/28
https://bunshun.jp/articles/-/11266