「不正はしていない」――。潔白を訴えながら「6月退任」を表明した日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長(71)。しかし、このタイミングで退任表明したのは、いっこうに疑惑が晴れず、“辞任”せざるを得なくなったからだ。フランスの司法当局は“贈賄”の嫌疑がかかっている竹田会長の捜査を続けている。はたして、退任表明によって捜査は止まるのか。

 竹田会長は19日の理事会で、6月の任期満了をもって退任する意向を表明。

 国際オリンピック委員会(IOC)委員も辞任する。疑惑を抱える会長の辞任は、IOCの強い意向があったとされる。国際ジャーナリストの春名幹男氏が言う。

「退任しても、捜査をしているフランスの司法当局は竹田氏に対する捜査を本格化させると思われます。IOCが辞任を迫ったということは、疑惑が濃厚だということです。リオ五輪招致の贈賄事件では、ブラジルの五輪委員会の会長が逮捕されています。同じ構図だけに竹田氏だけが免れるとは考えにくい」

竹田会長は昨年12月、フランス当局から、パリで事情聴取されている。
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 竹田会長の疑惑はこうだ。東京五輪招致委員会は、東京五輪招致「決定」(2013年9月)前後の7月と10月、2回に分けて約2億2000万円をシンガポールの「ブラックタイディングス社」(BT社)に振り込んでいた。BT社は国際陸上競技連盟(IAAF)のラミン・ディアク前会長の息子であるパパマッサタ・ディアク氏が関係する会社。ディアク親子は、招致のカギを握るアフリカ票に強い影響を持つ人物だ。この2億2000万円が、東京五輪を招致するための「ワイロ」だったとみられているのだ。

 一方、ソックリの贈賄事件が16年のリオ五輪で起きている。リオ五輪の招致が決まった09年のIOC総会前に、ディアク氏(息子)に200万ドルの賄賂を渡したとして、17年10月、ブラジル五輪委員会のカルロス・ヌズマン会長(当時)が、ブラジル連邦警察に逮捕されている。偶然なのか、金額も約2億2000万円だ。リオの前例に従えば、竹田会長が逮捕されてもおかしくない。

「欧米の司法当局はドライです。捜査対象者が責任を取って辞任したからと言って、捜査を緩めることはありません」(司法記者)

 辞任劇には、政権の意向が働いた可能性がある。フランス紙ルモンドは、竹田氏辞任の背景として、「日本の当局が問題を避けられなくなった」と分析している。

「今回の辞任は安倍政権の意向も働いていると思います。この先、竹田氏が逮捕や起訴されても、『前会長がやったこと』で済ませるつもりなのでしょう。しかし、20年東京五輪は、16年五輪の招致失敗後、政府を挙げて招致してきた経緯があります。森喜朗元首相や安倍首相も、素知らぬ顔はできないはずです」(春名幹男氏)

 竹田会長辞任で幕引きは許されない。

日刊ゲンダイ
19/03/20 15:00
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/250129/