「次なる時代の防衛力の構築に向け、今までとは抜本的に異なる速度で、変革を推し進める」――。安倍首相が17日、防衛大学校の卒業式でこう訓示し、防衛力強化に意欲を示した。昨年末に改定された「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画(中期防)」で打ち出した宇宙・サイバー・電磁波といった新領域が念頭にあるのだろうが、安倍首相の口から“異次元”のスピードで整備すると言われると、一体どこまで防衛費が膨らむのか空恐ろしくなる。

 新中期防では、防衛装備品などの調達規模は5年間で27兆4700億円となっている。

 年平均5兆4940億円だが、これで収まるとは思えない。

 5年連続で過去最大を更新した来年度の防衛予算案は5兆2574億円。しかしこれとは別に、今年度の補正予算に前倒しで4200億円を計上済みだ。つまり、防衛費の本当の年間予算は5兆7000億円近くに上っているのである。

 加えて安倍首相は、中期防の計画になかった「イージス・アショア」2基の購入を、トランプ米大統領からの“押し売り”で決め、新中期防に後付けで書き込んだ。費用も、当初1基700億円とされていたのが、維持費や試験費用などを含めた総額は6000億円超になるという試算もある。大統領再選を目指すトランプが来年度以降も、中期防の計画にない高額の新型兵器の購入を要求してくる可能性だってあるのだ。

「本来、年度の当初予算として計上すべき防衛費の一部を補正予算にするのは、問題があると思います。国民の気付かないところで無制限に予算を付けられるわけですから。米国関係では、防衛予算とは別に在日米軍の駐留経費として年間6000億円、再編費に2300億円を支払っています。トランプ大統領はこうした米軍絡みの経費を1.5倍に増額したがっていると報じられていますから、そうなれば1兆円を超えてしまいます。政府は、補正予算や米軍経費も含めた防衛関連予算の総額を隠さないで提示し、国民に説明すべきです」(軍事ジャーナリスト・世良光弘氏)

 自民党は昨年5月、対GDP比1%弱で推移してきた防衛費について、「GDP比2%」を提言している。単純計算で10兆円超とベラボーな金額になるが、安倍政権ならそこまで膨張したっておかしくない。

日刊ゲンダイ
19/03/19 06:00
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