GDP膨張に大きな役割を果たす「ソノタノミクス」についてお話しします。前回指摘したGDP改定要因のうち、国際的算出基準である「2008SNA」と全く関係がない「その他」の部分について、2016年12月のGDP改定当時の資料には詳細な数字の内訳がありませんでした。そこで、拙著「アベノミクスによろしく」の担当編集者が内訳を開示してほしいと内閣府に問い合わせたところ、こうした回答がありました。

〈「その他」は平成23年基準改定のうち、「2008SNA対応」を除いた部分になりますが、産業連関表の取り込み、定義・概念・分類の変更、その他の推計方法の変更(建設コモ法の見直し)等々が含まれ、様々な要素があり、どの項目にどれほど影響しているか等の内訳はございません〉 内訳がないのだから検証不可能です。これでますます疑惑が深まることになったのですが、内閣府は改定から1年以上も経過した17年12月22日になって「その他」の「内訳表に近いもの」を公表しました。なぜ「近いもの」なのかと言うと、その内訳表の数字を合計しても「その他」と一致しないからです。また、内閣府自身が、この内訳表の項目以外にも要因があると説明しています。

なぜこんな表を出したのか。ウラ話があります。17年12月上旬、報道番組「週刊報道LIFE」(BS―TBS)でこの“その他問題”が取り上げられる予定で、私もVTR出演するはずだったのですが、延期されました。そして、内閣府が「内訳表に近いもの」を公表した2日後の12月24日、「週刊報道LIFE」で“その他問題”が報じられたのです。

 当初予定されていた放送日は内閣府が横ヤリを入れて延期させ、その間に「内訳表に近いもの」を急造したのではないかと思います。BS放送とはいえ、テレビ報道の影響力は大きく、「内訳はない」と言い続けるのはマズイと思ったのでしょう。

「内訳表に近いもの」の詳細な分析は拙著「データが語る日本財政の未来」に書いてあります。

 一番重要な点は、国内消費がカサ上げされているということです。総務省の「家計調査」という統計には、各世帯の消費を指数化した「消費支出指数」というものがあります。これに世帯数を乗じた数字と、GDPの家計最終消費支出を比較したところ、14年まではほとんど同じ推移を示しているのですが、15年から急に「ワニの口」のように差が大きく開くのです。なぜ急にこんな現象が起きるのか――。衆院予算委員会で国民民主党の階猛議員に原因を質問された茂木経済再生担当相は回答できませんでした。

 悲惨な国内消費をごまかすために何か細工をしたのだと私は思っています。疑惑は深まるばかりです。 

 (おわり)

日刊ゲンダイ
19/03/17 06:00
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