日ロ平和条約交渉「テンポ失われた」 プーチン大統領

【モスクワ=小川知世】ロシアのプーチン大統領は14日、日ロ平和条約締結交渉について「テンポが失われた」と述べ、北方領土を日本に引き渡した場合に日米安全保障条約に基づき、米軍が展開する可能性があることが交渉の障害になっているとの見方を改めて示した。15日付のロシア紙コメルサントが報じた。

同紙によると、モスクワで開かれた産業界との非公開の討議でのプーチン氏の発言を参加者が明らかにした。同氏は交渉の経緯を説明し、「まず日本が日米安保条約から離脱しなければならない」と主張。安倍晋三首相が領土引き渡し後に米軍基地を置かせないと約束したとも明らかにしたが、米軍展開を阻む手段はないとの認識を示した。

プーチン氏は非公式に実施した調査で現地住民の99%が日本への引き渡しに反対したとして、地元の意見を無視できないとも語った。交渉を中断すべきではないが、「ひと息つく必要がある」と冷静な議論を求めた。

日ロ首脳は昨年11月に歯舞群島と色丹島の日本への引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を進めることで合意した。プーチン氏は「双方が受け入れ可能な条件を探る用意がある」と交渉推進に意欲をみせてきたが、安保問題で譲らない姿勢を改めて示した形だ。世論も引き合いに日本に譲歩を促すとみられる。

日本経済新聞
2019年3月16日 4:28
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42557680W9A310C1000000