漫画などを無断掲載する「海賊版サイト」対策を強化する文化庁の著作権法改正案を巡り、自民党内が紛糾している。「海賊版被害を根絶すべきだ」と規制強化に賛成論がある一方、「インターネット利用の萎縮を招く」として反対論も根強いためだ。

 改正案の柱となるのは、海賊版と知りながら私的にダウンロードすると違法になる対象について、従来の映像と音楽から、漫画や写真、文章など著作物全般に拡大する条項だ。スマートフォンなどによる画像保存(スクリーンショット)も規制対象だが、違法性を認識していない場合もあるため、刑事罰の対象を「反復継続した」悪質なケースに限定した。

 文化庁は今国会での成立を目指す考えだが、自民党は8日の総務会で改正案を議題とするのを見送った。1日の総務会では、「関係者への聞き取りが不十分」として了承を先送りし、文部科学部会での再度の議論を求めていた。

 同部会などは6日、漫画家らに聞き取りを行った上で、今国会で成立を目指す方針を確認した。しかし、「時間をかけて関係者の懸念を解消すべきだ」との反対論は収まらず、党内手続きはずれ込んだままだ。

 反対の急先鋒は、MANGA議連会長の古屋圭司衆院議員だ。6日の会合でも「(改正案は)生煮えだ」として、著作物全般を対象とする項目の削除や、今国会への提出見送りを主張した。

 古屋氏は安倍首相と近く、同日も首相と電話で対応を協議した。周辺には、首相も自分と同意見だと説明した。これに対し、文化庁幹部は「海賊版対策は元々、首相官邸主導だったはず」と困惑を隠せない。

 一部漫画家や有識者らは「ここまでの広い法規制は求めていない」として、規制対象を〈1〉原作のままダウンロードする行為〈2〉著作権者の利益を不当に害する行為――に限定すべきだと主張する。賛成派、反対派は平行線をたどっており、着地点は見いだせていないのが実情だ。

読売新聞
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