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産経新聞は、もともと保守的論調で知られていたが、10年ほど前から、その路線をエスカレートさせ、極右界隈やネトウヨ受けを狙う報道をどんどん増やしてきた。

極右歴史修正主義を全面展開する「歴史戦」なるキャンペーン、安倍官邸の提灯持ちとしか言いようがない露骨な政権擁護、そして、その結果としてミスリード記事やデマゴーグは枚挙にいとまがない。

一例をあげておくと、いま、安倍政権が強行している辺野古の新基地建設にしても、産経は安倍首相にすり寄るような“機関紙”ぶりを露骨にしている。たとえば投票者の7割以上が「反対」を投じた先月の沖縄県民投票開票日の翌日、産経は社説で「投票結果は極めて残念」などと民意を否定し、「移設推進を堅持しなければならない」と政権を弁護。辺野古沖の赤土問題でも安倍官邸のフェイクを一貫して擁護してきた。

さらに悪質だったのが2017年12月1日、沖縄市知花の沖縄自動車道で起こった米軍の人身事故に関し、〈クラッシュした車から日本人を救助した在沖縄の米海兵隊曹長が不運にも後続車にはねられ、意識不明の重体となった〉とのデマを掲載、その上で地元紙の沖縄タイムスと琉球新報がこれを〈黙殺〉したとして「報道機関を名乗る資格はない」「日本人として恥」とまで罵ったことだ。しかし、実際には “曹長が救出”という事実は確認できておらず、産経は沖縄県警に取材すらしていなかったことが判明(過去記事を参照https://lite-ra.com/2018/01/post-3768.html)。ようするに産経は、沖縄の民意を反映して基地問題に批判的な報道をしている沖縄二紙を貶めるため、堂々とフェイクニュースを報じるようになっているのだ。

方針転換?安倍首相の“お気に入り女性記者”を官邸キャップから外したが…

しかし、こうした路線にもかかわらず、部数は全く上向かず、どんどん右肩下がりになっていった。安倍政権のためなら民意を顧みず、フェイクも厭わないという堕落した報道姿勢は、一部のネトウヨや極右に受けたものの、一般読者を減らしてしまったのだ。しかも、こうしたネトウヨ路線を敬遠する企業スポンサーもあり、そのため営業赤字が確実視される事態に追い込まれたとの見方も広がっている。

こうした事態をなんとかしようと、産経内部でも一時、軌道修正をはかろうとしている形跡もある。たとえば、2017年6月人事では、政治部出身の熊坂隆光社長(現・会長)に代わり社長に就任した飯塚浩彦社長は、大阪社会部出身で産経内では「ネトウヨ路線に批判的」と言われる。さらに昨年秋、安倍首相お気に入りの政治部官邸キャップ・田北真樹子記者が本紙を離れ、月刊誌「正論」等の編集発行や関連イベントを担当する正論調査室の次長に異動になっている。

だが、こうした方向転換は徹底されたとはいえないし、いずれにしても、時すでに遅しのようだ。前出の産経新聞関係者がこう愚痴をこぼす。

「少なからぬ記者が『ウチはネトウヨ新聞だから』と自嘲して、半ば開き直ってます。一方で、優秀な記者は他の媒体に移っていく。このままネトウヨみたいな読者に依存していくしかないし、それはフジの子会社になったって変わらないでしょう。世間の評価を払拭するのはもう無理だと思いますよ」

ジャーナリズムの本懐を忘れた“ネトウヨ安倍官邸機関紙”の末路は哀れである。(編集部)