東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から八年を迎えるのを前に、桜田義孝五輪相は福島民報社のインタビューに応じた。二〇二〇年東京五輪・パラリンピックで県産の食材や木材、水素などの活用を後押しし、福島を世界にアピールする考えを強調した。

 −県は安全認証「GAP」を取得した農産物の選手村などでの提供を目指している。

 「先日、福島県を訪問した際にリンゴなどを食べたが、抜群においしかった。福島の食材は安全でおいしいと全面的に押し出していきたい。選手村以外でも競技会場のある各都市のホテル、ライブサイトなどの施設でも食事が提供される予定で、福島県産食材をPRする機会にもなる。福島県では十一市町村がホストタウンに登録しているので、各地域の食材を相手国の選手らに提供してもらうこともできる。原発事故による風評の払拭(ふっしょく)につなげたい」

 −県産木材をアピールする好機でもある。

 「メインスタジアムとなる新国立競技場のエントランスゲートに被災地の岩手、宮城、福島などの木材が使われる。さらに、大会組織委員会は東京・晴海に建設する選手村の交流スペース『ビレッジプラザ』に福島県を含めた協力自治体から提供された木材を活用する。安全で良質な木材のPRになるし、福島の林業振興につながればうれしい」

 −浪江町の水素製造拠点「福島水素エネルギー研究フィールド」で製造した水素をどう活用するか

 「浪江町に建設中の水素製造拠点では、再生可能エネルギーから年間約九百トンの水素を製造することができる。これは燃料電池車(FCV)で約一万台分に相当する。東京大会では、大会関係車両としてFCVの活用などを組織委員会が東京都などと連携しながら検討している。私としても、福島県産のクリーンな水素を東京大会で活用し、福島の新たな復興の姿を世界に発信していきたい」

 −復興五輪としての機運をどう盛り上げるか。

 「東日本大震災でさまざまな国や地域から温かい支援を頂いている。岩手、宮城、福島の被災三県を対象にした『復興ありがとうホストタウン』で住民と選手の交流を促進していく。例えば、飯舘村はラオスを相手国として、東京パラリンピックに出場する陸上と水泳のラオス代表の事前合宿に向けて調整している。支援に対する感謝の気持ちを示す良い機会でもあり、また日本、福島、飯舘に来たいとリピーターになってもらいたい。一過性ではなく、『観光立国・日本』の実現にも寄与したい」

 −ホストタウンの子どもたちが相手国の選手を応援に向かう際の移動手段などが課題となる。

 「移動手段や宿泊先の確保などについては、基本的には各ホストタウンで考えていただく必要がある。ただ、国としてどういうバックアップができるのか、考えていきたい」

 −暑さ、警備、輸送など課題への対応状況は。

 「選手や観客への暑さ対策が大きな課題となっている。この時期の日本は蒸し暑く、マラソンなどで使用される道路に、遮熱性舗装の施工を実施することで、路面温度の上昇を抑える。高温多湿な気候に不慣れな訪日外国人の対応も重要だ。外国語で対応できる救護体制や医療機関の受け入れ体制の整備も進めている。組織委と東京都などと連携しハード、ソフトの両面で対策を講じ、東京大会を成功に導きたい」

( 2019/03/03 09:56 カテゴリー:主要 )
福島民報
http://www.minpo.jp/news/detail/2019030360819