毎月勤労統計の調査方法変更をめぐり、厚生労働省は十五日、二〇一五年に設けた有識者検討会で、未公表だった後半三回分の議事録を公開した。一時は調査方法の変更はしない方向で意見がまとまっていたにもかかわらず、厚労省側が「引き続き検討する」と修正した中間整理案を提示していたことが議事録から分かった。その後に会合は一度も開かれないまま、変更が決まった。 (井上靖史)

 厚労省は一五年六月に、学識者やエコノミストら六人による「毎月勤労統計の改善に関する検討会」を設置した。サンプル調査している四百九十九〜三十人の事業所について、二〜三年に一度、全数を入れ替える方法から毎年、一部を入れ替える方法への変更などを話し合った。六回の会合のうち、四〜六回分の議事録が公開された。

 サンプル替えでは一部を残した方が入れ替え直後の賃金の下落は小さくなるが、検討会は「現行の方法でも実態を映せる」「変更は調査する都道府県の負担が大きい」などの意見が出ていた。一五年八月七日の五回目会合で、阿部正浩座長(中央大教授)は「方向性としては現在の総入れ替え方式が適当」とまとめた。

 だが九月十六日の六回目で、事務局の厚労省が入れ替え方法について「もう少し議論した方がいいという意見がある」と述べ「引き続き検討する」と、前回のまとめを修正した中間整理案を提示。姉崎猛統計情報部長(当時)が「総入れ替え方式ではなく、部分入れ替え方式を検討したい」と要望し、承認された。同省職員は委員らに「来年三月まで任期がある。また検討会を開催させていただく」としていたが、その後、一度も開かず、一六年に総務省の統計委員会へ変更を申請。翌年認可された。調査方法は昨年一月から変更され、他の基準変更も重なって賃金の伸び率は実際よりも過大となっていた。

2につづく

東京新聞
2019年2月16日 朝刊
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