海賊版だと知りながらインターネット上にある漫画や写真、論文などあらゆるコンテンツをダウンロードする行為を違法化しようと、文化庁が異例の急ピッチで作業を進めている。わずか5回の審議で週内にも議論を終える方針だ。一般のネット利用者への影響が大きい割に議論が拙速だとの批判が強まっている。

 文化庁は25日に文化審議会著作権分科会の小委員会を開き、現在は音楽や映像に限っている海賊版ダウンロードの違法範囲をネット上のすべてのコンテンツに広げるため、意見の最終とりまとめをする方針だ。今月始まる通常国会への著作権法改正案の提出を目指している。

 学者や弁護士など26人で構成する小委員会が違法ダウンロードの拡大の議論を始めたのは昨年10月29日。海賊版の被害を訴え賛成している出版業界のほか、「ネット利用が萎縮する」と反対しているインターネットユーザー協会など、賛否双方の立場から聞き取りをしてきた。

 委員からは、規制行為をもっと絞り込むべきだとの意見も出たが、同様の規制が先行している欧州の実態もふまえて対象拡大に賛成する意見もあった。4回目の審議となった12月7日、文化庁はすべての海賊版コンテンツのダウンロードを違法化する案を提示。大きな反対は出なかった。

 同庁によると、年明けにかけて募集したパブリックコメントに寄せられた意見は約600件。海賊版の被害者であるはずの漫画家や研究者らで作る「日本マンガ学会」は反対意見を送付した。漫画家の竹宮恵子会長は「公権力による強力で広範囲な法制化は、今まで著作権法上グレーな領域で行われてきた個人活動の一切を拒否するものになる。著作権上グレーな領域での活動が文化発展を支えてきた側面も大いにある。一刀両断の法制化は避けてほしい」という。だが文化庁は25日の小委員会で審議を終えたい意向だ。

 委員の一人は「通常国会に法改正案の提出を間に合わせるというスケジュールありきで議論が進んだ」と話す。

 規制対象をどこまで広げるのか…

朝日新聞
2019年1月25日7時4分
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