ひとつの落書きが騒動を起こしている。東京・港区の都所有の防潮扉に描かれていた1匹の黒いネズミの絵。これが英国の覆面画家、バンクシーの筆致と酷似しているとして、都が鑑定調査に乗り出した一件である。

 バンクシーは世界各地に神出鬼没、壁や路上に社会風刺的な絵を残すことで知られる。都の職員は約10年前から防潮扉に絵が描かれていることを把握していたが、昨年末に都民から「バンクシーの作品に似ている」との情報提供があり、現在は防潮扉を撤去。都の倉庫に大事に保管している。

■実は単なる落書き?

 騒動の火付け役は小池知事だ。17日に自身のツイッターに絵と一緒に並んだ自分の写真を掲載。〈あのバンクシーの作品かもしれないカワイイねずみの絵が都内にありました! 東京への贈り物かも?〉と無邪気に書き込んだのだ。

「バンクシーの作品発見か」と話題を集め、人気取りに政治利用するはずが、逆に「落書きを『贈り物』と表現するなんて」「違法行為を容認するのか」と批判ツイートを浴び、大炎上。先週末の定例会見でも「落書きを勧めているわけではない」と火消しに追われるマヌケぶりだ。

 さらに、日刊ゲンダイは英国の通販サイト「eBay」が、バンクシー作品の型紙を販売していることを発見。型紙の上からカラースプレーを吹きつければ、壁などに作品が浮かび上がるシロモノで、日本円にして約850〜約2000円で購入できる。

 防潮扉の落書きはA4サイズほどの大きさだが、型紙はA1〜A5サイズまでそろっている。落書きと型紙を比べてみると、ウリ二つ。心なしか落書きは黒いスプレーを吹き付けているようにも見える。

 残念ながら型紙が何年前から販売しているのかは確認できなかったが、小池知事の人気取り策が早とちりで終わり、みっともない結末を迎える可能性も出てきた。

日刊ゲンダイ
2019/01/21
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/245892/