22日の「安倍―プーチン会談」に向けての日ロ外相会談(14日)は史上最悪の“露払い”だった。ラブロフ外相から「北方領土と呼ぶな」とまで言われてしまった。これまで安倍首相は24回もプーチン大統領と会談してきたが、その結果がこれだ。日ロ交渉は長年積み重ねてきたが、現在、日本はロシアに最も突き放された状態にいる。そんな中、モスクワにノコノコ出かける安倍首相は、プーチンに“毒まんじゅう”を食わされる。

 14日の日ロ外相会談の不調を受けて、「こんな状態で安倍首相が訪ロしても得るものはない」などとささやかれているが、“成果ナシ”で済めばいい方だ。狡猾なプーチンが狙っているのは、北方領土問題を棚上げした「骨抜きの平 和条約」である。

「日本側は今回の日ロ交渉で、平 和条約の条文作成作業を開始することを確認したい考えでした。外相会談でメドをつけたかったのですが、ラブロフ外相は強硬でそれどころではなかった。政府内では、今回の日ロ交渉は、条文の件はもちろん、何も進展しないというムードが蔓延しています」(外務省関係者)

■外相“露払い”決裂に乗じて

 ところが、22日の会談ではプーチンがこうつぶやく可能性があるという。

「シンゾー、平 和条約の条文作成作業を始めようじゃないか」――。

 外相同士の“露払い”の決裂を受けて、進展をあきらめかけていた安倍首相が、「条文作成」という具体的な“進展”をちらつかせられれば、一目散に食いつくはずだ。会談後の会見で、「ウラジーミルと平 和条約の条文作成を開始することで合意いたしました」と胸を張る安倍首相の姿が目に浮かぶ。

 しかし現在、これまでにないような一方的なロシアの主張ばかりが幅を利かせている。そんな状態で、安易に条文作成を始めるのは危険極まりない。共産党の志位和夫委員長はツイッターで、<冗談ではない。基本合意が全くないもとで「条文作成作業」などに入ったらロシアへの全面屈服にしかならない>と懸念を示している。

元外交官の天木直人氏が言う。

「条文の作成は両国で基本合意ができて、最終的な文言を詰める作業です。北方領土問題のように真っ向から見解が対立している場合、条文作成はできません。それでも条文の作業を進めるというのは、北方領土の件には触れない平 和条約にするということです。つまり、北方領土の問題は棚上げにする。北方領土は日本に返還されることは永遠になくなり、両国の問題ですらなくなるのです。“歴史的成果”として平 和条約締結に前のめりな安倍首相が平 和条約に乗る可能性は高い。ロシアからすれば問題クリアです。狡猾なプーチン大統領が安倍首相をタダで帰すわけがありませんよ」

 安倍首相はきのう(16日)、鈴木宗男元衆院議員に「平 和条約を結ぶことが一にも二にも大事だ」と“前のめり”を露呈。22日の首脳会談はカツアゲされるためにヤクザの事務所を訪ねるようなもの。25回目の会談はキャンセルした方がいい。

日刊ゲンダイ
2019/01/18
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