2019年8月20日。群馬県でひとつの事件が起きていた。

58歳の女性から「92歳の母親が車の中で死亡している」という110番通報があったのだが、
警察が調べると確かに後部座席には座ったまま死んでいた92歳の母親の遺体があった。
すでに死後4日が経っている状態だった。

実はこの58歳の女性は住む家がなく、92歳の母親と27歳の長男と3人で車上生活をしていた
のだった。この三世代の一家は住むべき家を失っていた。その車上生活の最中で92歳の
母親は寿命が尽きた。

事件が起きた時は、すでに1年近く車上生活をしていた。車上生活と言っても、キャンピング
カーのようなものではなく、ごく普通の軽自動車である。

92歳の母親が死んでもすぐに届け出することも病院に駆け込むことがなかったことも衝撃だが、
それよりも狭い軽自動車で三世代が1年近くも生活していたということに驚く。

住所を失っても行政の支援や救済を求めない。問題解決の方法が分からず、
どうしていいのか分からないまま車で1年暮らす。今の日本で家を失って途方に暮れている
人たちが確かに存在する。