政府が日米合意に基づく米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)の硫黄島からの移転先として、鹿児島県西之表市にある無人島の馬毛(まげ)島を160億円で買い取ることで、地権者と大筋合意した。週内にも仮契約する。政府は移転準備を加速させたい考えだが、地元首長が慎重姿勢を示すなど反対論は根強い。

 政権幹部が明らかにした。馬毛島は種子島の西約12キロにあり、約8平方キロ。政府は2011年の日米合意で硫黄島の代替地として馬毛島を明記して以来、島の99%の土地を所有する開発会社「タストン・エアポート」(東京都)と交渉を進めていた。

 FCLPは、空母艦載機が陸上の滑走路を空母の飛行甲板に見立てて離着陸を繰り返す騒音を伴う訓練。もともとは厚木基地(神奈川県)で実施していたが、住宅地に囲まれているため、騒音問題が深刻化した。91年以降は、恒常的な訓練施設を確保するまでの間、暫定措置として硫黄島(東京都)で行っていた。

 しかし、硫黄島が悪天候の際は、厚木基地や三沢基地(青森県)で実施することにしているが、空母艦載機が駐留している岩国基地(山口県)とともに、青森、神奈川、山口の3県が騒音被害を訴えていた。一方で米側も硫黄島は岩国基地から約1400キロ離れて遠く、緊急着陸の場合には海上に着水するしかないといった事情から、代替地の早期整備を求めていた。

 西之表市の八板俊輔市長は9日、「用地の売買が成立した場合でも、市として馬毛島の利活用について鋭意検討を進めたい。FCLPよりもふさわしい活用方法があると考えている」とのコメントを出した。

朝日新聞
2019年1月9日12時50分
https://www.asahi.com/articles/ASLDP65Y3LDPUTFK01Z.html