第73爆撃団 エメット・オドンネル准将(当時)

──日本軍は奇妙だった。高度によろめきながら爆撃機はおろか
我々の護衛戦闘機にさえ迎撃機で体当たりを仕掛けてくるのだ
それもどうやら組織的作戦である。──そう、忌まわしいことに空のカミカゼだ──
(中略)しかしそれは、自分の戦力を自分で摩耗させてるだけであり
実際に日本軍の迎撃機の練度は日に日に落ちていき─訓練不足の乗員で次々充足させているのだろう─
それがさらにカミカゼ作戦で補わざるをえなくなっているのは明らかだった。

(中略)「やれやれ、ジャップは何を考えているのでしょうか?」
瀬戸内海の機雷封鎖任務を控えた
第500爆撃群のランド大佐が、気象班からの定例報告書を渡す際に
私に聞いてきたことがあった。
「何も考えていないさ」私はつぶやいた
「連中は我々と違って、戦争に勝つことには一滴の思考力も使ってない。
ただ目先の安心や充足だけを得たいだけな、臆病な連中なんだよ」
ランド大佐は「安心や充足ですか?やはりヒロヒトやトージョーのために死ぬことが?」
「ジャップの考えてることは私には分からんよ、ただ、それが
自分らの偉大なる主人様のためでも同胞家族のためでも強制でも、
結局は『何も考えていない』のは確かだ」
私は大佐にシガーケース差し出した。大佐は苦笑しながら
「それでは、我々は祖国のために戦争に勝つことを考えましょう」
大佐は私のケースの中から葉巻を3本取った。私は
「そうだな、考えるだけじゃなく貫徹しなければな、それが我々の義務だ」
と酷く訓示臭いことを言いながら、大佐の手から葉巻を2本取り返した。