米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設計画で、防衛省は14日、辺野古沿岸部に土砂を投入し、埋め立て工事を始めた。1972年の沖縄の本土復帰後、初めてとなる大型米軍基地の建設が本格化した。移設に反対する沖縄県の玉城(たまき)デニー知事は「県の要求を一顧だにすることなく土砂投入を強行したことに激しい憤りを禁じ得ない」と強く反発。日米両政府が96年4月に普天間飛行場の返還に合意して22年余。混迷が続いてきた移設計画は大きな節目を迎えた。

 沖縄では2014年以降、2代続けて移設阻止を掲げた知事が誕生し、計画の見直しを求めてきた。玉城知事は県庁で緊急記者会見を開き、「法をねじ曲げ、民意をないがしろにして工事を進めるのは、法治国家、民主主義国家としてあるまじき行為だ」と厳しく批判。「国は一刻も早く工事を進めて既成事実を積み重ねて県民を諦めさせようと躍起だが、工事を強行すればするほど県民の怒りは燃え上がる」と指摘し、移設阻止のために「あらゆる手段を講じる」と強調した。

 埋め立て予定海域の一部には軟弱な地盤があり、大規模な地盤改良工事には県への設計変更の申請が必要になるとの指摘もある。玉城知事は承認権や、知事選など多くの選挙で示されてきた民意を盾に、今後も政府に移設計画の断念を迫る考えだ。来年2月24日には辺野古移設の賛否を問う県民投票も予定されている。

 米軍キャンプ・シュワブ沿岸部に建設する普天間飛行場の代替施設は長さ1800メートルの滑走路2本をV字形に整備。総面積はシュワブの陸上部分を含めて約205ヘクタールで、うち約160ヘクタールを埋め立てる。東京ドーム16・6杯分に相当する土砂2062万立方メートルを使う。

 防衛省は水深の浅いシュワブ南側での工事を先行してきた。全体の埋め立て面積の4分の1にあたる二つの海域(計約39ヘクタール)を護岸で囲い、14日はうち6・3ヘクタールの海域に土砂を投入した。南側の海域の埋め立ては早ければ半年で完了するが、水深の深いシュワブ東側の工事はほぼ未着手だ。

 当初の計画では護岸工事の開始(17年4月)から5年で埋め立てを完了し、その後、3年で必要な施設の設置や手続きを終える予定だったが、既に工事は遅れている。普天間飛行場の返還時期は早ければ22年度とされているが、代替施設の建設が前提とされるため返還時期は見通せていない。

 辺野古移設を巡っては、翁長雄志(おながたけし)知事(当時)が15年10月に前知事による埋め立て承認を取り消したが、16年12月に取り消しを違法とする県側敗訴の最高裁判決が確定した。県は今年8月、急逝した翁長氏の遺志を継ぎ、軟弱地盤の存在などを理由に承認を撤回。工事は一時止まったが、石井啓一国土交通相が承認撤回の効力を止める執行停止を求めた防衛省の申し立てを認め、11月に工事が再開された。【遠藤孝康】

毎日新聞
2018年12月14日 21時01分
https://mainichi.jp/articles/20181214/k00/00m/010/192000c