安倍晋三首相は26日の衆参両院の予算委員会の集中審議で、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた入管法改正案について、分野別の受け入れ人数の上限が法改正前には確定しない、という見通しを示した。政府は2019〜23年度の受け入れ見込み人数を「最大34万5150人」と説明してきたが、山下貴司法相はこの数字が「各省が出した『素材』であり、上限ではない」と答弁。法案成立を急ぐ政府の準備不足が改めて露呈した。

 首相は「分野別運用方針」に記す受け入れ見込み人数を「上限」として運用するとした一方で、「(同方針は改正後の)法律に基づいて策定される」と明言した。さらに山下法相が「5年間で最大34万5150人」は仮の数字だと釈明したため、立憲民主党の山尾志桜里氏は「(今国会で)積み上げた議論が無駄になりかねない」と反発した。

 政府・与党は、今回受け入れを拡大するのは一定の技能が必要な分野を想定しており、「単純労働分野」ではないと主張している。法務省は6日、単純労働に当たる業務として「土をこちらからこちらへ持って行くのを、ずっとやる仕事」と例示していた。

 だがこの日の予算委で、改めて例示を求められた首相は「多くの方が懸命にしている仕事を、『単純労働だ』と切り分けるべきでない」と明言を避けた。山尾氏は「例を一つも挙げられないような、幻のカテゴリーを作るから苦しい答弁になる」と皮肉った。

 また法務省は、技能実習生の今年上半期の失踪者数を4279人だと答弁。現時点での実態調査結果を示すよう求める野党に対し、山下氏は「刑事訴追につながり得るものがある」と拒否した。立憲の福山哲郎氏は、新たな在留資格を取得する人の100%近くを実習生が占める業種もあるとして、「実習の状況を把握せずに法案の採決などあり得ない」と批判した。

 与党は26日、日本維新の会と改正法案の修正で合意し、政府関係者は「採決の環境は整った」と語った。「国民に十分な情報が示されていない」と採決に反対する立憲など野党6党派は26日、大島理森衆院議長に27日の法務委開催を止めるよう要請したが、大島氏は「委員会でよく話し合ってほしい」と述べるにとどめた。

【青木純】

毎日新聞
11/26(月) 20:28配信
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