【モスクワ=小川知世】ロシアのプーチン大統領は15日、平和条約締結後に歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すとした1956年の日ソ共同宣言について「引き渡す根拠や、どちらの主権になるかは明記されていない」と述べた。安倍晋三首相とプーチン氏は14日の首脳会談で56年宣言を基礎に平和条約交渉を加速すると合意したが、2島先行返還の可能性を探る日本をけん制した。

シンガポールで記者団の質問に答えた。56年宣言には不明瞭な点が多いとし「本格的な検討が必要だ」と述べ、交渉には時間がかかるとの認識を示した。首相の交渉加速の提案には「取り組む用意がある」としたが「ロシア側には何の問題もない」と述べ、北方四島はロシアに属するとの立場を言明。主権問題で譲らない考えを示唆した。

プーチン氏は56年宣言をめぐる過去の経緯に触れ「日本側が履行を拒否した」と日本の責任で実現しなかったと強調した。長年にわたる領土問題の議論で、日本の方針転換にロシア側が応じているとの姿勢もにじませた。

日本経済新聞
2018年11月15日 21:50
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3780605015112018MM8000/