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 隣国の大統領の施政に干渉する権利は、日本人にはない。それが国際政治の原則である。ところが、在日の評論家を含む韓国人は、安倍晋三首相や日本の内政、憲法問題に激しく干渉する。何か不公平だ。

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党書記長との南北首脳会談後に「ローマ法王の訪朝要請」「対北制裁緩和を欧州各国に提案」など、北朝鮮「パシリ」外交に懸命だ。この背景には、金委員長のソウル訪問実現でノーベル平和賞を目指し、大統領再選を狙う野心がある。

 現行の韓国憲法で、大統領の任期は1期5年。つまり、文大統領は2022年までの任期となる。文政権は今年3月に、大統領任期を4年とする代わりに、2期まで再選可能な憲法改正案を発表した。ただし、文大統領には適用されないという。

 だが、この改憲案には反対も多く、関連法案が成立しないため、国民投票にかかっていない。なお、成立した場合、文大統領にも再選の可能性は残されている。文大統領がノーベル平和賞を受賞すれば、「再選可能にすべき」の声が世論から上がる、と期待しているからだ。

 文大統領は、そのためにも「ローマ法王訪朝」を実現したいと考えた。9月の南北首脳会談で、文大統領はローマ法王の平壌訪問を提案し、金委員長も同意した。これは、対北経済制裁の緩和のための環境作りで、そうなれば、金委員長のソウル訪問も可能になると期待している。

 文大統領は10月18日にバチカンでローマ法王フランシスコと会見し、金委員長の「訪朝招請」を伝えた。韓国の報道機関は「法王 訪朝に前向き」と一斉に報じた。しかし、ローマ法王庁の公式声明は必ずしも「前向き」ではなかったのである。

 日本のメディアも韓国の報道をそのまま引用し、「ローマ法王 訪朝に前向き」(毎日新聞)と報じた。だが、この取材と報道姿勢には、首をかしげざるを得ない。韓国の報道機関は、大統領府や政府の意向を受けた記事を報じがちだ。それに乗せられてはいけない。

 日本のメディアは、ローマ法王庁に取材するか、法王庁の公式見解とイタリアでの受け止め方を報道すべきだった。明らかな取材不足だ。それでも、産経新聞だけが「北朝鮮 宗教弾圧続く」と報じた。報道の背景には、日本の特派員が北朝鮮の宗教事情を知らなかった事実がある。

 北朝鮮は、憲法で「宗教的信念の自由」を明記しているが、「宗教活動の自由」は認めていない。平壌には、カトリック系の長忠大聖堂とプロテスタント系のチルゴル教会、ボンス教会がある。長忠大聖堂には、司祭はいないという。プロテスタント系の教会には「自称」牧師が存在するが、本格的な神学校を卒業したわけではない。

 北朝鮮のキリスト教会幹部と信者は、ほとんどが工作機関の統一戦線部の職員である。1988年ごろ、統一工作のために、西欧と日韓のキリスト教界への浸透を目的に設立された。こうして、日本や韓国の教会は、工作員を韓国や日本に侵入させるルートとして利用されていった。

 9月の南北首脳会談には、韓国カトリック教会の金喜中(キム・ヒジュン)大主教が同行し、「ローマ法王庁に南北和解と平和を伝える」と金委員長に述べた。だが、カトリック教会の大幹部なら、北朝鮮に人権弾圧と政治犯収容所の解放を求めるべきだろう。宗教活動の自由も要求してほしかった。北朝鮮では、聖書の所持は逮捕され、布教も禁止されているからだ。

(略)