中国の習近平国家主席と首脳会談を行うため、25日から訪中する安倍首相。日中関係改善をアピールする狙いだが、その目玉に急浮上しているのがパンダだ。

 菅官房長官は18日、「国民に広く親しまれるパンダの来日が実現すれば喜ばれる」と、新たなパンダを迎える可能性を示唆。一部の自治体がパンダの「レンタル」を中国側に求めてきた経緯を踏まえ、安倍首相は李克強首相との会談で重ねて要請するという。

 人気取りのためなら、あらゆることを利用してきた安倍首相だ。「私が新たなパンダ来日を実現させた!」とアピールしたいのだろう。

「沖縄県知事選で大敗し、日米貿易関係も厳しくなると予想される今、安倍さんにとっては、パンダは人気浮上の道具なのでしょう。国内に1頭もいなければ話題になるでしょうが、すでに10頭もいる。国民の多くが『またパンダか』と思っても不思議ではないし、少なくとも、跳び上がって喜ぶような話ではありません」(政治評論家の本澤二郎氏)

■レンタル料は年間1億円

 政府がパンダ歓迎ムードを演出している中、受け入れ先の候補として挙がっているのが、神戸市の王子動物園と仙台市の八木山動物公園だ。

 パンダには何の罪もないが、「レンタル」だからお金がかかる。2011年に「シンシン」と「リーリー」を貸与された東京都は、「レンタル料」として年間約1億円(95万ドル)を中国側に支払っている。カネのある都ならまだしも、地方の自治体にとっては「レンタル料」は高額だ。候補に挙がっている2動物園の反応は――。

「メスとオスのパンダを飼育していましたが、8年前にオスが亡くなりました。以来、中国側に『オスを下さい』と要請し続けています。現在、保護活動費として年間2800万円(25万ドル)を中国側に支払っています」(王子動物園長)

「震災後、パンダを迎える意思を表明しています。中国側と具体的に交渉しているわけではありません」(八木山動物公園広報担当)

 日中友好とは裏腹に安倍政権は最近、中国を仮想敵国とした離島防衛のための新型ミサイル「高速滑空弾」を装備化する方針を固めたという。やっていることが矛盾だらけのマンガだ。

 そんな安倍首相の人気取りに使われるパンダが可哀想でならない。

日刊ゲンダイ
2018/10/20 06:00
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