2018年10月8日 朝刊

 ライブ会場は国会周辺。合言葉は「言っとくけど、俺の自由はヤツラにゃやらねえ!」。日ごろライブハウスなどで活動するミュージシャンたちが七日、国会議事堂周辺で政治、社会問題を歌にした「イットクフェス」を開いた。国会を取り囲むように八カ所に分かれたステージで九時間にわたり、ロックやフォークのリズムに乗せた熱い思いを伝えた。 (蜘手美鶴)

 「政治を変えよう、あいつら変えよう」
 普段は静かな国会周辺に、ドラムやギターの爆音に乗せた歌声が響く。ボーカルの浦辺力さん(53)=東京都渋谷区=ら五人組のバンド「24代目★選挙関心委員会」の「選挙行く?音頭」だ。政治に不満を持っても、選挙で一票投じなければ変わらないというメッセージ。集まった人たちはリズムを取りながら歓声を上げた。


 イットクフェスは、「自分の歌を自由に歌うことこそが、民主主義を守る」との思いから浦辺さんが企画した。初めて開催した昨年は、浦辺さんが音楽仲間に呼びかけて七十六組が参加したが、今回は「今年もやりたい」と自ら希望する声が多く、当日の飛び入りもあり百一組が集まった。

 「今の政治や社会に、みんなモヤモヤした不満がある。だからこれだけ集まってくれた」。そう話す浦辺さんは紫の法被にふんどし姿で、平和主義をうたった憲法前文をラップでまくしたてた。

 川崎市多摩区の高橋よしあきさん(55)は、国会正面で沖縄基地問題や政治の在るべき姿をギターの弾き語りで歌った。「何かがすぐ変わるとは思わないけど、歌い続けることが大事」。貧しい暮らしをしていた自分の幼少期を題材にした歌手や、日本で徴兵制が敷かれる危険性を替え歌で歌うグループなど、午前十一時から午後八時まで、多様な歌と演奏が続いた。

 人通りがほとんどない日曜日の国会周辺。観客は決して多くはない。警備をする警察官の方が多いときもあり、演奏者が「警察官の皆さんもお疲れさま」と声を掛けることも。それでも演奏と一緒に踊りだす観客もいれば、信号待ちで車からじっと見つめているドライバーもいた。

 フェスに訪れた東京都目黒区の無職吉沢幸子さん(71)は「デモをしても受け入れられにくいテーマでも、音楽だとスッと心に入ってくる。文化祭に来たような感覚で、こういう発信の仕方もあるんだと思った」と笑顔を見せた。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201810/CK2018100802000118.html