2日に発足した第4次安倍改造内閣。野党だけでなく、自民党内からも「在庫一掃の閉店セール内閣」と揶揄する声が上がる。安倍首相は「全員野球内閣で政策を進めていく」とか言っているが、ポジションがライトばかりで試合になるのか。メンバーの思想が“右”に偏りすぎなのだ。極端な右寄り布陣は、往年の「王シフト」さえ彷彿させる。

■19人中14人が日本会議

 就任会見で早速やらかしたのが、柴山昌彦文科相だ。教育勅語について、「現代風に解釈され、あるいはアレンジした形で、道徳などに使うことができる分野というのは十分にある。普遍性をもっている部分がみてとれる」と話した。

 言うまでもないことだが、戦前・戦中の教育規範とされた教育勅語は、戦後に国会で失効が決議されている。柴山の発言は、文科行政をつかさどる閣僚として、あり得ない見解だ。

「柴山さんは安倍総理が幹事長だった04年に自民党初の公募に合格して、埼玉8区の衆院補選に出馬した。バリバリの“安倍チルドレン”です。これまで文科行政と無縁だったのに、文科大臣に抜擢されたのは総理の肝いりで、教育現場への政治の介入がますます進みそうです」(自民党中堅議員)

 党内でも「筋金入りの右翼」と評されている桜田義孝五輪担当相は、14年に文科副大臣を務めていた当時、河野談話の見直しを求める会合に出席。「私は事実を捏造することを非常に嫌う人間だ。皆さんと気持ちは同じで、考え方も同じ。最善を尽くして応援する」と発言し、菅官房長官から電話で注意を受けた。しかし、まったく懲りていない。16年1月の党会合でも、慰安婦について「職業としての娼婦だ。ビジネスであって、これを犠牲者とするような宣伝工作に惑わされすぎている」と話し、直前に結ばれた慰安婦をめぐる日韓合意の内容と整合しないとして、与党内からも批判が噴出。発言の撤回に追い込まれた。

原田義昭環境相も「南京大虐殺はなかった」と主張してきたひとりだ。15年に南京大虐殺の関連資料がユネスコの世界記憶遺産に登録されると、自民党の「国際情報検討委員会」の委員長を務めていた原田が「客観的な歴史事象に照らされたものではない」と噛みついた。「南京大虐殺や慰安婦の存在自体を、我が国はいまや否定しようとしている」というのだ。

 唯一の女性閣僚で注目を集める片山さつき地方創生相も、慰安婦少女像の撤去を主張。さらには、韓国への修学旅行が「国益に反する洗脳教育が行われる危険がある」「背後に国内の『反日組織』が関与している疑いもある」とネトウヨ脳全開のケチをつけていた。

 片山は自民党憲法改正草案の起草委員も務めたが、12年に「国民が権利は天から付与される、義務は果たさなくていいと思ってしまうような天賦人権論をとるのはやめよう、というのが私達の基本的考え方です」とツイッターに投稿して、炎上。人間は生まれながらに自由かつ平等で幸福を追求する権利をもつという「天賦人権説」を真っ向から否定したのだから、物議を醸すのは当然だ。

「閣僚19人のうち、14人が『日本会議国会議員懇談会』に所属している非常に偏った内閣です。トップの安倍首相が戦前回帰の極右思想に侵されているから、こういうお仲間が集まってくる。とんでもないタカ派内閣で憲法改正をゴリ押ししようという意図が見えます」(政治評論家・本澤二郎氏)

 そんな内閣では、投げるボールは“ナイカク、タカめ”の危険球といったところか。早いとこ「トウシュ交代」すべきなのは間違いない。

日刊ゲンダイ
2018/10/05 06:00
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