■安倍陣営の“アッキー隠し”戦略、石破派恫喝はこの大臣? 「自民党総裁選」裏の裏

安倍総理と石破茂氏が激突した自民党総裁選。国会議員票はそれぞれ329票と73票、地方票は55%と45%を獲得したという結果は「石破さんが善戦したことは間違いありません」(政治部デスク)という評価である。その「329」の数字をめぐっては、出陣式の出席者と票数があわない「カレーライス事件」も取り沙汰され、“裏切り者”探しが続くと見られる。

安倍陣営にとっては、地方票が伸びなかったことをどう総括するのか、という点も頭の痛い問題である。

「共同通信が事前に行った党員支持動向調査で、石破さんが安倍総理を上回っていたのは、茨城、鳥取、島根、高知の4県のみでした。しかし、フタを開けてみれば、その倍以上の10県で石破さんが総理を上回ったので衝撃が走りました」(自民党関係者)

 特に、保守王国として知られる群馬県では、2012年の総裁選に続いて石破氏が勝利。その衝撃は安倍陣営にとって決して小さなものではなかったという。陣営の前に立ちはだかったのは、6年前は石原伸晃氏、今回は石破氏を支持した小渕優子元経産相だ。

「小渕さんは総裁選が始まる前に地元で行われた集会で“石破さんを支持します”と表明しましたが、具体的な活動は何もしていないはずです。一方の安倍総理側は元々、建築業界などの組織票を持っており、その上、群馬での決起集会も行った。それでも石破さんを上回れなかったのだから、いかに安倍総理の人気がないかがわかります」(群馬県政関係者)

 出陣式で振る舞われたカレーが甘かったのか辛かったのかは定かではないが、

「安倍陣営は秘書などのスタッフを全国に派遣して、裏切りが疑われる議員の動向を監視させていました。そして、そのスタッフから、集会への参加不参加や電話作戦への力の入れ方を報告させ、締め付けを強化していたのです」(先の政治部デスク)

 と、安倍陣営の締め付けは“激辛”だった。そのことも、安倍総理側に入るはずだった票を「削る」方向に作用した、と見られている。特に、石破派の斎藤健農水相が、「安倍応援団の一人」から圧力をかけられたと暴露した影響は大きかった。

「斎藤農水相に“辞表を書いてから(石破氏の応援を)やれ”と圧力をかけた人物について、石破派の幹部は茂木敏充大臣の名前を挙げています」(政治部記者)

 当の茂木経済再生相は、

「そのような事実はない」

 と言うのみだが、いずれにせよ、

「この件について、安倍総理本人が“圧力をかけた人間がいるというなら、具体的な名前を挙げろ”などと言ってしまったのもまずかった」(永田町関係者)

■干物の干し方

 石破陣営の関係者は、

「石破を応援することを表明した議員のところに、安倍陣営の人間から電話がかかってきて、“総務省にいい若手がいる”などと言ってくるケースもあったようだ。次の選挙の際にお前に対抗馬を立てるぞ、と脅しているわけです」

 そう明かした上で語る。

「ただ、石破応援団にはそうした圧力を受け流す余裕があった。竹下派所属で石破に投票することを表明した橋本岳衆議院議員は総裁選の2日前、自分のフェイスブックに『干物の干し方』と題して干物の写真をアップした。総裁選後、安倍総理サイドが石破応援団を徹底的に干すだろう、との見方が出ていたことを揶揄しているのは明らかです」

 一方、“干物”にされたくない一心で投開票日まで態度を明確にしなかったのが、小泉進次郎筆頭副幹事長。

「進次郎本人はもっと早く石破氏支持を表明したかったが、菅官房長官から“止めたほうがいい”と忠告されて思いとどまっていた。彼は今、宰相を目指す上で政治家としてのピークをどこにもってくるかについて思い描いている最中で、安倍総理サイドと全面的に戦って“三年寝太郎”になるのは得策ではないと考えたのでしょう」(先の政治部デスク)

 小泉氏の動向が目立たなかった背景には、そうした戦略があったわけだ。

続く

週刊新潮
2018年10月4日号掲載
https://www.dailyshincho.jp/article/2018/10040801/?all=1&;page=1