ジャーナリスト・斎藤貴男さんに聞く

 ネトウヨ雑誌が断末魔をあげた末に息絶えた――新潮社が発行する月刊オピニオン誌『新潮45』(新潮社)は「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」と題した特別企画を掲載。同企画は、8月号に掲載されて批判を浴びていた自民党衆院議員・杉田水脈(みお)氏の寄稿文「『LGBT』支援の度が過ぎる」を擁護する7本の論文で構成されており、その内容の悪質さから新潮社社内からも批判の声があがっていた。新潮社は21日に佐藤隆信社長のコメントを発表し、25日には休刊(=廃刊)を決めている。

■意味不明な、「痴漢の触る権利を保障すべき」論

『新潮45』10月号特別企画で特に問題となったのは、アベ応援団の一員としても知られる自称・文芸評論家の小川榮太郎氏の「論文」。あえてカッコつきにしたのは、論文とは名ばかりのトンデモ言説のオンパレードで、読むに堪えないレベルの論文モドキだからだ。

 驚くのは、のっけからLGBTの問題を「性行為」に矮小化していること。「男と女が相対しての性交だろうが、男の後ろに男が重なっての性交だろうが、当人同士には何物にも代えられぬ快感であっても(中略)公道に曝け出すものではない」と卑わいな表現で読者を煽り、終始飛ばし気味に論を進める。聞かれてもいないのに「(自分の)夜の顔については、自信と誇りをもって、私が世を憚る格別な変態であっても」公言しない、と胸を張るあたりは、ひょっとしたら真正の露出癖なのか。

あるところでは唐突に「周知のように『共産党宣言』は…」と始まったかと思えば、「(階級闘争という概念に)何十億人が犠牲になったことだろう」と憂えてみせる。すでに読者は置いてきぼりで何が言いたいのか皆目わからない。ちなみに同特集の藤岡信勝氏論文では、なぜかマルクスがやり玉にあがっており、ほとほと「アカ」いものに目がない御仁たちだということがよくわかる。「自分たちに楯突くものは全員左翼で共産主義者だ」と本気でそう信じていそうだが、マルクスもここまで「過大」評価されると本望だろう。

 最も意味不明で、さらに内容の悪質さから識者から批判を浴びたのは、「痴漢の触る権利を保障すべき」という箇所。小川氏によると、「痴漢をやめられないのは脳由来の症状で、だから権利を保障すべきだ。なぜなら、LGBTが論壇の大通りを歩いているのは自分にとって死ぬほどショックだから、LGBTの権利を保障するなら痴漢の権利も保障すべき」だという。本気で書いているとは到底思えない正真正銘のトンデモ論法で、この段階になると小川氏がどうこうというよりも、この原稿を担当した編集者がなぜ活字になることを許したのか、そちらのほうが気になってくる。いやしくも天下の新潮社である。月刊HanadaやWiLLとは違うのだ。

つづく

ニュースサイトHUNTER
2018年9月28日 08:00
http://hunter-investigate.jp/news/2018/09/28-shincho45.html

http://hunter-investigate.jp/news/2018/09/27/20180928_h01-05.jpg
杉田水脈・衆院議員(自民党)

http://hunter-investigate.jp/news/2018/09/27/20180928_h01-06.jpg
小川榮太郎氏(本人のTwitterより)