久しぶりに平野貞夫元参院議員の来訪を受けた。そして、大変興味深い話を伺った。安倍政権が内乱を企て準備をしているという話である。一般に「内乱」といえば反政府勢力が暴力で国家の転覆を図ることであるが、氏は現政権こそわが国の転覆を企てている……と主張している。その理屈は次の通りである。

 まず、内乱罪(刑法77条)の保護法益は「憲法が定める統治機構の基本秩序」であるが、森友・加計問題などが明らかにした「権力の私物化」は憲法が定めた民主政治の破壊以外の何ものでもない。

 また、内乱罪が成立するためには「暴動」が不可欠であるが、それは集団による組織的な暴行・脅迫を意味するが、その暴行には単に乱暴な行為だけでなく「不正な行為」も含まれるといわれている。さらに、脅迫とは、「ある行為を行わせようとしておどす」ことである。そうすると、官僚に対する人事権を有する者が昇進と左遷を意識させながら「自分の友人の優遇」やそれを隠蔽するための「公文書改ざん」などを求める組織的圧力も「暴動」と呼べなくもない。

 加えて、内乱予備罪(刑法78条)とは内乱の準備をすることである。それは物資の調達や参加者の勧誘などをいうが、それには「言葉による誘導」も含まれる。となると、「みっともない憲法だ」「改憲はヒトラーに学べ」「私と妻は無関係だ」などと明らかに不適切な発言で属僚たちの忖度を招いたといわれている高官たちの関与も問われてくる。

 このような解釈が、罪刑法定主義(人権尊重)の観点から刑法を厳格に解釈・適用する検察官の同意を得られるとは思わないが、それは事柄の本質を突いているのではないか。

 平野氏は、元国会官僚で、小沢一郎代議士の知恵袋と呼ばれて久しい。そんな氏が前述の自説を掲げて行脚を始めたところに、あからさまな権力の不正を目の前にして手も足も出ない少数野党へのいら立ちが表れているように見える。

 しかし、本当にいら立っているのは、もはや世論の過半数に達していると思われる主権者国民のはずである。

日刊ゲンダイ
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/233457