◆インターネットは社会を分断するのか?
2018年7月13日 富士通総研 田中辰雄 浜屋敏

http://www.fujitsu.com/jp/group/fri/column/opinion/2018/2018-7-6.html
(長いので全文はこちらで)

1. 社会の分断とインターネット

インターネットが登場した時、ネットによって人々は時間と空間の制約を超えて交流することが可能になり、体験と知見が共有され相互理解が進むと期待された。相互理解は民主主義の基盤であり、ネットは民主主義をより良くすると素朴に信じられていた。しかしながら、現実には相互理解が進むというより誹謗と中傷が跋扈(ばっこ)し、相互批判ばかりが目立つようになった。人々の政治的な意見は左右の二つの陣営にますますわかれていき、社会は分断されているという印象が生まれる。アメリカでは、この分断はデータによって裏付けられており、分極化(polarization)と呼ばれている。

(略)

確かに、わが国でもたとえばネトウヨと呼ばれる人々が集まるサイトや掲示板のコメント欄では、同じような意見があふれており、互いに声をそろえるうちに過激化しているように見える。リベラル側でも、原理主義的な環境主義者や反原発サイトはそれに沿った意見一色になっており、異論をはさむことはほとんど不可能に思える。ネット上では過激な意見が目立ちやすいのは事実だが、わが国でも本当に政治的な意見の分極化は起きているのだろうか。そして、その原因はインターネットにあるのだろうか。

2. 過激な意見を持っているのは誰か?

私たちは、上述したような疑問に答えるために、インターネット利用者に対してアンケート調査を2度実施し(2017年8月と2018年2月)、その回答を分析した。

まず、1回目の調査では、以下のような政治的な争点を 10 個用意して、賛否を「強く賛成」(1)から「強く反対」(7)まで 7 段階で答えてもらった。その平均値の分布を示したのが図表1である。

(略)

この図を一見してわかるように、この調査の回答者の政治的意見は、中庸的なものが多く、ほぼ正規分布に近い。分極化とはこの分布が両端にひろがることである。もしネットの利用で分極化が進むというのなら、ネットを利用する人ほど両端に位置するだろう。

そこで、政治的な意見の過激度(左右どちらかに極端かどうか)を測定する指標を作り、それと回答者の属性(年齢、性別)や各種メディア(ネット上のブログやSNS、TV番組、新聞など)への接触度との関係を分析した。その結果、過激度にもっとも大きな影響を与えているのは回答者の年齢であり、年齢が高いほど過激な意見を持つ傾向があることがわかった。ツイッターやフェイスブックの利用も意見の過激度と有意な正の相関関係があるが、その程度は年齢ほどではなかった。

3. 分極化の原因は何か?

ネットの利用は意見の過激度と正の相関関係があることはわかった。しかし、一度の調査だけでは因果関係はわからない。つまり、ネットを利用しているから意見が過激になるのか、過激な意見を持っているからネットを積極的に利用するのかはわからない。私たちは最初の調査から6か月後に同じ対象者に対して二度目の調査を行い、分極化が進んでいるかどうか、進んでいるとすればネットがその原因なのかを分析した。

(略)