22日の国会会期末が迫り、審議が大詰めを迎えているカジノ法案。参院内閣委の柘植芳文委員長(自民)は13日、野党の反対を押し切り、17日に安倍首相が出席して質疑を行うことを職権で決めた。安倍政権は、何が何でも今国会でカジノ法案を成立させるつもりだ。

 石井啓一国交相は「依存防止対策などを重層的かつ多段階的に講じたクリーンなカジノだ」と繰り返すが、逆に多重債務者を続出させる仕組みが盛り込まれている。賭け金が不足した客に、胴元であるカジノ事業者がカネを貸せるのだ。

「顧客への金貸しは、日本参入を狙う米カジノ企業の強い意向でした。持ち金がなくなって帰られたら、せっかくの“上客”を逃すことになります。法案では意向通り、カジノ事業者が施設内で『特定金融業務』ができるようになった。これで、顧客の資金繰りの限界を超えておカネをつぎこませられます」(金融関係者)

法案によると、カジノ事業者は一定額を預けた顧客に無制限で貸し付けができる。返済期間は2カ月以内でナント無利子。

 手持ちのカネがなくなったギャンブラーが、負けを取り返そうといかにも飛びつきそうである。ところが、タダほど怖いものはない。返済できなければ、年利14・6%もの違約金が発生。カジノ事業者は、第三者に債権譲渡や回収を委任できるから、ニコニコ貸してくれた事業者ではなく、コワモテの兄ちゃんが取り立てに来かねない。

 そもそも、消費者金融やカードローンなどの多重債務が大問題になり、貸金業法の改正で、2010年6月から限度額を設定。貸金業者からの借入残高が年収の3分の1を超える場合は、新たな借り入れはできなくなった。そんな法の歯止めも、カジノ場に一歩入れば“治外法権”。正常な判断を失ったギャンブラーは青天井で借金を押しつけられるのだ。

「金融業者は、ビジネス縮小につながる年収3分の1の限度額設定には抵抗しました。しかし、深刻な多重債務問題を見過ごすわけにもいかず、苦渋の決断で限度額をのんだ経緯があります。カジノ場の無制限融資は、そうした努力を台無しにするもので、金融機関はカンカンでしょう」(金融ジャーナリストの小林佳樹氏)

 石井は「顧客の利便性のため」と説明するが、そこを便利にしてはマズイだろう。こんな危ない法案は絶対に通してはいけない。

日刊ゲンダイ
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