28日の参院厚労委で強行採決された「働き方改革」関連法案。29日の参院本会議で可決され、成立する見通しだ。与党は過労死促進法とも呼ばれる「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)に対する反対の声を無視し、数の力で押し切った格好だが、看過できないのが、参院野党第1党の国民民主の“裏切り”だ。

 審議すればするほど、高プロの立法事実がないことが明らかになり、政府の答弁も説得力ゼロ。世論の約8割が成立を望んでいないにもかかわらず、国民民主は参院の審議時間が衆院を上回ったことから、舟山国対委員長は「丁寧な審議を重ねてきたのは事実だ」として、採決を容認してしまった。立憲などが提出した島村委員長の解任決議案も、国民民主は「委員長に瑕疵はない」と同調せず、決議案は採決すらされなかった。

 これでは、野党共闘どころか、安倍政権の補完勢力ではないか。衆院の審議で、高プロに徹底抗戦した山井、柚木両議員(国民民主)が、夜の国会前集会で「お叱りは覚悟で来た。思いは皆さんと同じです」と話すと、聴衆から「だったら採決阻止しろよ」と怒声が飛んだのもムリはない。山井は困惑の表情を浮かべ「どうしてああいう対応になったのか。参院側に理由を聞きたい」と話すのが精いっぱいだった。

だが、国民民主の“裏切り”はこれだけじゃない。ナント! 来週にも開かれる衆院憲法審査会で審議が始まるとみられる国民投票法改正案で、自公との密約がささやかれているのだ。

「自公と国民民主が、国民投票法改正案をめぐり、すでに合意をかわしたという文書の原案があるようなのです。中身は、ただちに、3党で協議機関を設立するという内容と聞いています」(国民民主関係者)

 秋の自民党総裁選で安倍3選の可能性が強まり、自民党内では安倍首相にすり寄る動きが目立ってきた。一方、日経、毎日の世論調査では、国民民主の支持率はゼロだ。与党は国民民主を揺さぶって狙い撃ちし、引っ張り込みさえすれば、今国会で改憲の前提となる国民投票法改正の成立が見えてくると考えているのだろう。相変わらず卑怯なやり方だが、それに乗っかる国民民主もだらしがない。

「国民民主は採決で反対するようですが、今日の動きは明らかに安倍政権を利する動きです。野党であることを捨てたと言っていい。よりによって、過労死を促進する法案をめぐってです。自公からは感謝されても、国民からは総スカンでしょう」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)

 国民はよーく覚えておこう。

日刊ゲンダイ
2018.06.30
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/232309/1