◆参院選改革 小手先にすぎない自民党案
2018年06月20日 06時00分 読売新聞

 抜本改革を避け、小手先の対応を繰り返してきた結果だろう。参院の選挙制度がさらに複雑化する弊害は小さくない。

 自民党は、参院の選挙制度を改革する公職選挙法改正案を国会に提出した。来夏の参院選から実施するため、延長後の今国会で成立させる考えだ。

 野党の指摘を勘案しながら、合意形成に努力すべきだ。

 2015年の改正公選法は付則で、選挙制度の抜本改革について「結論を得る」と明記した。

 だが、自民党は、合区を解消する憲法改正案の取りまとめを優先するあまり、選挙制度改革に関する与野党の協議に、十分な時間を割かなかった。

 参院選を約1年後に控えた今になって、憲法改正は実現できないとして、唐突に新たな案を提示した姿勢には疑問を拭えない。

 公選法改正案の柱は、比例選に、優先的に当選する「特定枠」を導入することである。

 自民党は、政党に必要な人材らの確保が理由だと説明する。本当の狙いは、「鳥取・島根」「徳島・高知」の合区で、立候補できない自民党の現職議員を救済することではないか。党利党略と批判されてもやむを得まい。

 現行の非拘束名簿式は、候補者の個人票が多い順に当選が決まる仕組みで、有権者の意向がより反映されるのが特長だ。

 特定枠を設けることで、制度の理念は曖昧になり、より複雑で分かりにくくなる。

 自民党は当初、上位2人の特定枠を想定していたが、改正案では、各党が設定の有無や人数を自由に決められるようにした。

 政党は事実上、拘束か非拘束、あるいは両制度の混在を選べる。政党によって制度が異なるようでは有権者の混乱を招くだろう。

 自民党は特定枠導入と合わせ、比例選の改選定数を2増する。

 特定枠を設けることで不利になる比例選出議員やその支持団体の反発を避けようとしたのだろう。身勝手な姿勢が目に余る。

 選挙区選については、「1票の格差」を是正するため、埼玉選挙区の改選定数を1増やし、3人区から4人区にする。最大格差は前回参院選の3・08倍から、3倍未満に収まる見込みだ。

 参院の選挙区は、都道府県を単位としているため、格差是正は容易でない。定数にこだわらず、柔軟に制度を見直すことは容認されるべきだ。「身を切る改革」と称して定数削減を主張するだけでは、建設的な議論は望めない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20180619-OYT1T50097.html