■福田康夫元首相

 「記録を残す」とはどういうことか。新しい法律ができたとします。それはどんな社会情勢の中で、どんな議論を経てできたのか。国民がその時々の政治や行政を評価するためには、後々まで残る正確な記録が必要になる。それが選挙では投票行動につながり、政治家が選ばれ、政策が決まっていく。正しい情報なくして正しい民主主義は行われない。記録というのは民主主義の原点で、日々刻々と生産され続けるのです。

別の言い方をすれば、保存文書が歴史を作り、国家を形成する。小さな石を積み上げて石垣を造っていくようなもの。ふだんは意識されないけれど、とても大事な作業で、日本という国は一体どういう国かといったら、そういうことの積み重ねの成果ではないでしょうか。
公文書管理をめぐる不祥事を、驚きを持って見ています。公文書管理法の制定に向けた準備を進めていた当時、なかには都合の悪い文書は作らない人たちもでるかなとは考えた。だがまさか、改ざんするなんて想像もしなかった。改ざんは、びっくりだね。
国会では政府が事実を小出しにし、また新たな事実が発覚する、ということが繰り返されている。これではいつまで経っても終わりませんよ。いつまでも果てない議論の責任は追及する野党の側にあるのではありません。原因をつくった政府が責任を持って解決することを目指さなければならない。

 財務省の文書改ざんのような「事件」が起きたら、まず担当する大臣が「責任を感じます。徹底的に解明します」と言わなければならなかった。自分のことじゃないような顔をしていたのは残念。

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 森友学園への国有地売却をめぐる公文書改ざん、交渉記録の廃棄。加計学園の問題では、国ではなく、愛媛県の文書で新たな事実がわかった。公文書管理法制定に尽力した福田康夫元首相が、朝日新聞のインタビューに応じた。(聞き手・高橋淳、倉重奈苗)

朝日新聞
2018年6月9日05時00分
https://www.asahi.com/articles/ASL5S7JK3L5SUTIL06L.html