2011年に廃止された地方議員年金を事実上復活させる法案を、与党が今国会に提出しようとしている。会社員、公務員らの厚生年金への加入を認める内容で、推進派は地方議員のなり手不足の解消に不可欠だと主張する。復活すれば保険料の公費負担が生じ、世論の反発は確実。自民党の若手議員からは反対論が出ている。(関口克己)

 国会議員と地方議員にはかつて独自の年金制度があったが、〇四年に国会議員らの国民年金未納が発覚した際に批判の的になり、国会議員年金は〇六年に、地方議員年金は一一年にそれぞれ廃止された。地方議員年金に関しては、平成の大合併による市町村数の減少で掛け金を納める地方議員が少なくなり、積立金が底をつく恐れがあったことも廃止の要因だった。

 地方議員年金の復活に向けた動きは、第二次安倍政権の発足後に表面化した。全国都道府県議会議長会は一六年、地域の自立した社会づくりを促す安倍政権の地方創生策で地方議員も専門知識が求められ、なり手が不足していると指摘。地方議員年金の実現を求める決議をした。

 地方の要望を受け、与党は具体化の議論に着手。昨年八月、国民の公的年金の受給資格が十年に短縮されると、厚生年金への加入案が浮上し、自民党は地方議員を自治体職員とみなす案をまとめた。現在の地方議員約三万三千人が全員加入すれば、自治体の保険料負担が新たに年約二百億円生じると総務省は試算する。

 与党の取り組みは、国会議員年金復活への布石との見方もある。自民党の竹下亘総務会長は昨年十一月に「若くして出てきている国会議員たちが退職したら全員、生活保護だ。こんな国は世界中にない」と語った。

 こうした動きに対し、四月中旬の自民党総務部会では、若手から異論が相次いだ。小泉進次郎筆頭副幹事長は「地方議員のなり手不足解消の一点では、国民の理解を得られない。反対だ」と明言。小泉氏ら若手は復活に反対する勉強会を発足させた。座長の高橋比奈子衆院議員は「なり手不足は介護も建設も農業も同じだ」と主張する。

 年金制度に詳しい渡部記安(のりやす)・元立正大大学院教授は「超少子高齢化が進む中、地方自治や社会保障制度の公平性や透明化を図らないまま、地方議員に対する超特権的な年金を復活させることは国民に巨額の負担増を強いる」と批判する。

(東京新聞)
2018年5月2日 07時03分
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